初出勤!異世界勤務1日目
初出勤1日目です。
「おはようございます!」
とりあえずここは勢いだ。大きめの声で挨拶をしながら部屋に入る。
すると、王女のマリアがにっこりと迎えてくれた。
「こちらへどうぞ」
面接をした部屋から奥へ続くドアが今日は開いている。
奥からはザワザワと多くの人の気配がしている。
「今日から一緒にお仕事をしてくれる柳原圭さんです。」
マリアが紹介してくれる。
「宜しくお願いします!!」
異世界でも普通の会社みたいにしていればいいのかな?
取り敢えず深々とお辞儀をしてみる。
「宜しく。」
15人程だろうか、忙しそうにしていた人たちがこちらを向いて挨拶をしてくれた。
全員が自分と同じ服を着ているが、髪の色や長さが様々で中には腰まである長い髪が紫しかもラメ入りのように
キラキラと輝いている人もいる。
種族とかそういった違いがあったりするのかな?
色々考えていると
「朝会をしましょう。」
マリアの掛け声に全員が隣の面接を行った部屋に集合した。
「まずは自己紹介からね。」
「私はマリア。この水落の都の王の娘で、水号院では総務をしているわ。」
「総務・・・。」
どうやら異世界にも総務はあるらしい。
「柳原さんにはまず簡単な照合作業をして欲しいと考えています。」
隣の周りからすれば地味でメガネのようなレンズを片目につけた男の子の肩にマリアは手をかけた。
「ではこちらのシーラムについて今日は作業をしてみてね。」
シーラムと呼ばれた自分より少し年下に見える男の子は僕の方を向くと穏やかな笑顔で笑った。
自分の自己紹介をするのはかなり苦手なので、緊張したが
異世界から来たこと、簡単な職歴を面接で話した通りに繰り返した。
変な目で見られないか、困る質問をされたりしないか内心ヒヤヒヤしていたのだが
思ったよりあっさりと受け入れられたようで驚いた。
異世界から人間が来るのは珍しい事のように思うのだが、クオリアを見たといえば全員が
「そうなのか」
と納得する風である。
こちらからすれば「クオリアって何なの?」という状況なのだが、
まるで「台本に書かれているなら当然そうするよな?」とでもいうような自然さで全員が受け入れる。
運命とか導きといった壮大なものでも無く、占いや風水のように曖昧なものでもない。
天気予報のように身近で、台本のようにその通りに行動する。それが当たり前のようなのだ。
異世界でこのまま暮らせばクオリアの概念を理解し受け入れる事ができるようになるのだろうか。
僕の自己紹介が終わり他のメンバーの紹介が始まる。
メンバーは全員で15人。必死で名前を髪の色と結びつけて覚える。
髪の色がカラフルなのと、メイク?のようなものが個性的なので印象は強いが
なんせここは異世界。馴染みのない横文字だらけの名前がぜんぜん頭に入ってこず、若干の焦りを覚える。
全員一周回った所でマリアが手を叩いた。
「はい。それでは今日はすぐに業務に入ってください。」
「柳原さんはシーラムについてね。」
「はい。」
元の部屋にまた全員が移動する。
するとそこで早速僕は目を見張る事になる。
部屋には壁沿いに机と椅子。普通の会社のオフィスのような作り。
普通の会社のオフィスと違うとすれば、部屋の内装机や椅子が石造りである事位だ。
しかし全員が各々の席についた瞬間、机のやや左端から
キラキラと輝く光の柱が現れたのだ。