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異世界暮らしの始まり。

ここは・・・。

そうだ。異世界。


疲れからかなりぐっすり眠ってしまったようだが、幸い初出勤に遅刻はしなくて済みそうだ。

部屋には時計がかかっている。

この世界には時計があるのか。良かった。旅の間は時間や時計の概念について諦めていたのだけれど。

時計に近寄って触れようとしたその時。


「うわっ!」


突然周りの空気がユラっと動いたかと思うと触れた先から霧のように時計が消失してしまった。


「えっ?えぇ???」

パニックになって3歩ほど後退りしたところ

ゆらりとまた時計が元あった場所に像を結んだ。


「どういう事だ・・?」

あまりに不思議な現象を前に寝ぼけているのか確認してみるが、夢の中というわけでもなさそうだ。

というか今周りの景色自体が異世界なのでもう何が何だかわからない。


とりあえず深呼吸をして、もう一度時計に近づいてみる。

やはりそっと触れようとすると霧散しまた離れると現れる。

何度も繰り返してみたが結果は同じで時計に触れる事ができない。


しかし今日は初出勤。初日から遅刻するわけにもいかないので

異世界だからきっと魔法とかそういったものがあるのだろう。きっとそうだ。

無理矢理自分を納得させてシャワーを浴びて服を着替える。


着慣れない服にやや手間取ったものの何とか身支度を終えた。

問題は持っていく荷物だ。


そういえば・・。

昨日旅の途中でスマホを確認したら充電が切れた状態でただの文鎮と化していたのだが

一切電源は入らないのだろうか。

元引きこもりとしてはスマホもPCも無しの環境で今後耐えられる自信があまり無い。

電源が一時的に入ったところで使える機能なんてたかが知れているのだが。

一縷の希望を胸に電源ボタンを長押ししてみる。


すると


文鎮だったはずのスマホ画面が急に明るくなった。

食い入るように見つめていると段々と明るくなった画面いっぱいの光が形を変えてゆき、

文字が浮かび上がった。

「次のクエストは初出勤です。王宮内の水号院へ」

「水号院・・?」


ああ、初出勤として呼ばれたあの部屋のことか?

このクエストとかの言い回し・・これってもしかしてクオリアってやつか?

スマホにも出てくんの??


流石は異世界。何だか色んな疑問を考えるのは無駄に思えてきた。

取り敢えず初出勤!お仕事するしかない!!


時間を確認すると丁度7時を回ったところだ。

念のため就職面接のための荷物一式にスマホを突っ込んで食堂に向かう事にする。


食堂の場所は聞いていたのだが、そこに着くと既に扉の外にまでたくさんの人が行列を作っている。

近づいていくと自分が着ている服と似た格好の人たちもちらほら居るようだ。

もしかしたら同じ職場で働く人たちなのかもしれない。

挨拶でもするべきなのだろうか。そもそも「おはようございます」なのか?

逡巡していると急に元気な声で名前を呼ばれた。


「ケイ〜!ケイだよね!?おっはよ〜!!」


顔を上げると人混みの向こうでランが大きく手を振りながらぴょんぴょん跳ねていた。

隣にはスワロがこちらをみながら手を振っている。


「おはようございます。」


列に並んでいるであろう二人に近づきながら挨拶をする。

「ケイ〜こっちの服もらえたんだね!似合ってるよ!」

「でも・・その鞄すごい違和感ね。」


・・確かに。靴も服も支給されたが鞄は自前なので素材からして余りに不釣り合いだ。

「変でしょうか。」

「まあ、異世界から来た事を隠す訳でも無いのなら大丈夫よ。」

「鞄が異世界っぽいという事ですね。」

「そうね。こちらには余りそういったデザインは無いから。」

「心配ないよ〜!かっこいいって!」


そう、なのか?

「ありがとう。ラン。」


ランとスワロは列を離れ、一緒に後ろへ並び直してくれた。


「今日が初出勤なのね。」

「はい。わからない事だらけで不安ですが、クオリア?らしきものを見まして・・」

スマホを取り出してスワロに見せてみる。


「私には見えないみたいね。」


まだスマホにはハッキリとその文字は浮かんでいるのだが

スワロにもランにも見えないようだ。

クオリアは見えるべき人にしか見えないという事か。


「スワロさんとランさんは毎日ここで朝食を?」

「そうね。暫くは近くにアイテムを探しに出て見つかれば都度戻ってこようと思っているからその時はこの時間に来るわね。」

「では会えたら一緒に食べてもいいでしょうか?」

「勿論よ。」「いいよ〜!やった〜!」


この世界で出会った頼りになる二人と一緒に朝食を取れるのは嬉しい。


「この世界のこともわからないことだらけでしょう?何かあったら相談に乗るわよ。」

「ケイと沢山お話ししたい〜!」


本当に二人に出会えて良かった。

無職で引きこもりの自分が異世界で就職なんて頭が大混乱なのだが

二人のおかげで少し冷静さを取り戻す事ができた。


朝食の列は順調に進み、食堂何入る。

バイキング形式で見たこともない料理が並んでいる。

目移りばかりしているとランとスワロがおすすめを教えてくれた。


一番人気はに卵と肉を挟んだパンでサンドイッチらしいが何故かパンが黒い。

どうやら黒ゴマ?のような物を練り込んで作っているらしい。

朝は手早く食べられるし、栄養バランスも中々らしい。

酸味のあるソースは卵に混ぜられていてバランスが良く、肉もさっぱりとしていて人気なのもうなづける。


白い服が汚れてしまわないかと気をつけて食べていると、

スワロが「王宮から支給されたものなら汚れないように魔法でコーティングされているわよ」といって笑った。

試しに水を少し散らしてみると水は生地の少し上で暫く浮かんだと思ったら空中を滑って床に落ちた。

撥水加工のようなものか。


異世界の人々も食べ物も全てが珍しく、スワロ達ともっと話もしていたかったが今日は忘れてはいけない初出勤の日である。

少し時間に余裕を持つため食べ終えるとスワロ達よりも先に席を立つ。


「初出勤頑張ってね。ケイ。」

「お仕事がんばれ〜」


二人に見送られながら、いざ、水号院へ!!









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