王宮に就職?王の娘マリアとの出会い
謁見の間に鎮座しているのは、人の良さそうなおじさん・・・。
にしか見えなかったが、服装はRPGでよく見るタイプの王様そのものだった。
「今日は3人か。」
どうやら今日謁見するのはこの3人だけのようだ。
「ここに来たのはクオリアの意志か。」
「はい。」
スワロとランが声を揃える。
「冒険者としてこちらを拠点にしばらく活動することとなります。」
スワロが首のペンダントを示しながら喋る。
「同じく」
ランも同様に首のペンダントを示す。
「そなたは?」
王様の言葉に冷や汗が流れる。
今の状況を喋ってみたところでどのように扱われるのか想像もつかない。
黙って俯いてしまった俺にスワロが助け舟を出す。
「どうやらこの柳原は異世界から迷い込んだようなのです。
しかし、クオリアによってこちらに導かれました。私達はキラの草原にて出会い、
ここまで同行してきましたが持ち物、魔力の有無から間違いないと考えております。」
すると、何故か王様がニッコリとこちらに笑顔を向けた。
「ちょうどよかった。今王宮は人手不足でな。戻る方法もわからず難儀しているならここに留まるが良い。」
「え???」
何この展開。
「良かったわね。」
スワロがこちらに笑顔を向ける。
「良かったねー。」
ランも笑顔だ。
とりあえず、良い展開なようなので「ありがとうございます・・」
とお礼を述べる。
王が側近らしき人物に告げる。
「マリアをここに呼びなさい。」
マリア・・・?
しばらくすると、スラリと長身、色の白い美しい女性が王の玉座後方から現れた。
「ワシの娘、マリアじゃ。」
「マリアです。異世界から迷い込んだと言うのはあなた?」
ニコニコとした笑顔が眩しい。
「はい。柳原圭一といいます。」
王様によるとどうやらこの都では冒険者の滞在、移動の際に発生する魔力の総量が株のように
投資の対象になっていること、そして物資・貴重なアイテムの売買を王宮直属の商会により管理しているとのことだった。
「私も今年から政務に関わることとなりましたの。」
王の娘、マリアが微笑む。
「今はあまりに人手不足だからの。」
「異世界から来た柳原さんには、是非お手伝いをお願いしたいのです。」
「はぁ・・。」
突然のことに、とりあえず返事らしきものをしてみたのだった。
謁見の間を後にし、そこから部屋を割り当てるまで待っていて欲しいと通された休憩所のような場所で
スワロとランはキラキラとした眼を俺に向けた。
「ケイと一緒でよかったわ。こちらもあまり探られることも無く謁見を終えられました。」
「ホントに良かったね〜!ケイも迷子さんだし、冒険者じゃないなら王宮がきっと安全だよっ!」
・・・そうなのか?色々と気になる事があるのだけれど、混乱していて流れに全然ついていけない。
これから俺はどうすればいいのか?元いた世界に帰れないのか?ここでお手伝い?とは??
王宮で働くと言う事なのだろうか??
「スワロさん、ランさん。俺は王宮で働く事になったんですか?」
「?そうね。ラッキーじゃない。」
「ラッキーなんですか?」
「落水の都は人手不足だという噂は常々聞いていたの。こうもトントン拍子に話が決まるとは驚いたわね。」
「これからスワロとランは冒険に出ちゃうけど、拠点はココだからまた会いにくるねっ!」
ランが持っていたクッキーのようなお菓子を俺の手に乗せた。
「ありがとう。」
王様の側近がこちらに近づいてくる。
「柳原様、こちらです。」
「はい。」
「じゃあ。またね。」
「またね〜ケイ!」
スワロとランを背に俺は呼ばれた方へと向かう。
これから始まる冒険・・いや、試練ともいえる王宮での生活をこの時はまだ何も想像できないまま・・。