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【完結】マジック・ラプソディー  作者: 橙猫
第16章 予兆の期末試験
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Epilogue 宣戦布告

『聖天学園でテロ発生!? 犯人は世界各国の魔導犯罪連合軍!』

 それが、聖天学園テロ事件について掲載した新聞の見出しだった。


 第二次世界大戦後から鉄壁のセキュリティを誇っていた学園でのテロは世界中を震撼ほどのニュースとなり、学園に在籍している生徒の保護者達からのクレームが殺到した。

 もちろん学園側も今回の事態には頭を下げる他なく、復旧とセキュリティを一から組み立て直すため年明けまで学園を休校することを決定。


 テロ事件後一足先に帰国した一、二年生達は、二学期から各国のIMF支部が借りた公共施設で授業を続けることになった。

 三年生は予定通り期末試験の結果が出て、それに反映した実習先へ行くことが決まった。ほとんどが自国での実習先であるため、一部を除き三年生も下級生達と同じようにすでに帰国を済ましてある。


 堕天した鈴木恵美子は、事件後IMF管轄の病院で長期入院することになった。

 あの時日向が開発した魔法『00(モディフィカディオ)』は、魔核(マギア)を破壊せず堕天化を強制消去させるというもの。

 その影響なのか、鈴木の魔核(マギア)は堕天化前と変わらず煌々と輝いていた。


 しかし、鈴木が人を殺した事実は変わりない。

 本来ならカルケレムへの収容もあったが、堕天の原因は家庭環境と婚約者による肉体的・精神的暴行のため、IMFは聖天学園の退学と魔導士免許証永久剥奪という温情判決が下された。

 この判決に鈴木家は猛抗議したが、悠護が堕天したきっかけと山本の証言を提示したことにより口を閉ざし、また婚約者も暴行の件は否定せず、素直に罪を認めた。


 結果、鈴木家は魔導士家系として没落し、婚約者は婚約破棄。

 すでに落ちぶれていた鈴木家はともかく、婚約者の方は今回の件で家の存続が危うくなるだろう。

 この話を聞いた鈴木は、


「……そっか。ははっ、あんだけ必死になってたのに、終わりはこんなに呆気ないものね」


 そう言って、静かに涙を流した。

 彼女の本心がどうだったのか、日向には分からない。少なくともこの結末は彼女自身も望んでいたものだったのだろと察した。

 魔導士家系は常に蹴落としがあり、非魔導士と生まれた子の扱いは家畜よりもひどい。彼女もそんな競争戦争に否応なく投げられ、あの食堂での一件からすでに限界だったのだろう。

 これで少しでも鈴木の肩の荷が下りたらいいと思った。


(これで一段落ついた。後は、カロンを片付けるだけ)


 この事件で、カロンは世界全土に正式な声明を送った。


『この世界はもはや腐りきっている。あらゆる人種が利権のために無意味な血を流し、魔導士は己の力をひけらかして非魔導士を見下す。この世界を存続させるほどの価値はあるだろうか?

 ―――答えは否だ。あらゆる理不尽と不条理が飛び交うこの世界などいらない! 国際魔導士連盟、そして世界中にいる魔導士諸君よ。我ら『ノヴァエ・テッラエ』は、この腐敗した世界を、新たな世界へと作り変えてみせる。

 これは、この世界と、それを創った〝神〟への宣戦布告である!!』


 そんな宣戦布告に触発され、『ノヴァエ・テッラエ』を支持する者が増加。

 中には『世界への怒り』として魔導犯罪を起こす集団も現れ、世界は世界大戦時のような波乱に巻き込まれていった。

 何も知らない政府やIMFはこの対応に追われる中、日向は鈴木が入院している病院を出る。


 ロビーから出ると、そこには悠護達が立っていた。

 全員が日向を真剣な面立ちで見ており、それを見て深呼吸する。


「――――行こう」


 その一言で、全員が静かに頷く。

 これから立ち向かう波乱を見据えながら、日向はその一歩を踏み出した。

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