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はじまり*
――この世界は、物語で溢れている。
物語は、人生の記録そのものだ。
ある人は他愛のない幸福に満ちた日々を記し。
ある人は怒涛に満ちた半生を後世に伝えるために記し。
ある人は過去の過ちを繰り返さないよう未来の若者に向けて記す。
人の数だけ物語があり、それと同時に喜劇も悲劇もある。
木の枝のように無数にある選択を選ぶも、それが己の望む道なのか、それとも違う道なのか。
それは、その道を歩む本人にしか分からない。
その先に待つ結末がハッピーエンドでも、バッドエンドでも、メリーバッドエンドでも。
物語の終わりは、その物語の持ち主によって記される。
これから記されるは、とある少女の物語。
時に笑い。
時に泣き。
時に悩み。
時に戸惑い。
時に苦しみ。
待ち受ける真実と絶望を前にしても進むことをやめない少女と、そんな少女の周りに集まった者達が織りなす物語。
まるで魔法のように不可思議に変化し、狂詩曲のように自由で優雅に奏でる、幻想的で儚い叙事詩。
さて、この名がない物語は、一体どんな結末を迎えるのでしょうか――――?