とある家の恋愛事情
いっぺん。死んでみっしゃんせ。
そんなことを言われたら、死ぬしかないと思うのは私が間違っているだろうか?
「そんなことは無いんじゃない?」
幼馴染の美紀はそう言う。
「祥吾の小説だし。主人公の性格は人それぞれでしょ」
「そうだね。小説の主人公って頑張り屋さんだし」
今は二人して小説の設定を書き上げている最中。
物語は現代チックでファンタジーを織り交ぜたようなもの。
主人公は現代人だけど何でも正直に聞いてその通りに行動してしまう。
ヒロインが異世界から飛ばされてきて主人公をあるべき順路に戻していくというモノ。
「あとは、目標が必要か」
「簡単じゃん。社会に貢献するために主人公は終活をするで」
「それじゃあ、物語としては終わってるよ……」
「んー。じゃあ、ヒロインがバイトを始めるけどうまく社会貢献できずに主人公からは慣れなきゃいけないとか」
「それも、主人公見捨ててるね」
「もー。難しいんだよ!」
そう。目的とキャラの設定がかみ合わないのはよくあること。
今はそんな状況だ。
でもどうにかして書きたいものだ。
「うーん。ヒロインが来たことによって恋愛にはいくけど、他の行動目標がね」
「ヒロインが主人公に貢ぐ! 祥吾は私に貢げ!」
「ヒモね。って俺は貢がないし!」
「ちぇー」
いつもこんな感じ。
俺の部屋に遊びに来て小説の手伝いをしてもらっている。
他に遊ぶ相手はいないのか?
「でも、祥吾の書く小説は面白いんだけどね」
「ありがと。そう言ってもらえると嬉しい」
ここからお決まりの恋愛に――とはならない。
だって、お互いに彼氏彼女はいるのだ。
これまた、不思議な縁で美紀の妹が俺の彼女で俺の兄貴が美紀の彼氏なのだから。