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私は別に  作者: メイリ
8/9

第八話

 圧倒的な威圧感でその場にいる人みんなが、自然と膝をついた。

 それはあのフローラさんも一緒で。


『さあ、もう帰ろう』

『そうだね十分遊んだよ』

『当初の目的は完遂している。これ以上ここに居る理由はない』


 ……うん、まあ、そうなんだけど。

 私はこのまま帰って良いんだよね?

 良いはずなんだけど、なんかモヤモヤする。

 思いの外『人間じゃない』発言が効いているみたい。


 ……そういえば、思っているよりも熱くなっていたようで、冷静になって辺りを窺うとちょっと気になることが。

 何であそこに……。


 なるほど、これも茶番か。

 ……いや、違うか。

 じゃあ、何で?

 ああ、もう! 直接聞こう。



「ねえ、何で父がいるの? 」


 私の声に友人達も辺りを見渡した。

 父がいるのは王のすぐ後ろ。

 もちろん姿は消しているけど、冷静になった今ならわかる。

 私が声をかけたからか意外と簡単に父は姿を現した。


『やあ、愛しき我が娘ミルザよ。久しぶりだな』


 父の姿にまた周りの人達が固まっている。

 父は私と違い常時力を纏っている為見た目がアレだ。

 なんか派手なんだよね〜。

 まあ、しょうがないよね全ての精霊の頂点らしいし。

 だから髪の色がキラキラとレインボーなのは許してほしい。

 色が混ざらず各々が主張しているというのは目に優しくないけど。


「何で忙しいから自分の代わりにリュークさんを護れって言ってた父がここにいるの? 」


 もう一度聞いてみた。

 確か北の大地で大量に龍が発生して、そのせいで精霊が困っているから助けるのに忙しいって言ってた。


『あ〜〜、それは嘘だ』


 今、さらっと嘘って言ったよね。


「へえ、私があまりこちらの方へは来たくないと言っていたのに、嘘をついてまで来させたんだ」


 私の声が若干低くなったのはしょうがない。

 そして、それと同時にちょっと床が凍って気温が低くなったのも許してほしい。


『だって、そうでもしないとミルザは人の国に行かないだろう? 』


 そりゃそうだ。

 別に来たくないもん。

 いくら母の母国でもね。


『まあ、嘘をついたのは悪かった。だけどお前には人の国も見てもらいたかったんだ。……お前には精霊と人の血が入っているんだから』


「じゃあ、リュークさんが悪しき者に襲われたのも父のせいなの? 」


『いや、あれは違う。だけどそれを理由にはしたがな。この国の王であり我が友のシュバルツの協力も得てな。シュバルツすまなかった』


 父がそう言うと、さっきまで宰相に支えられていた王がスクッと立ち上がり父に笑顔を見せた。


「いや、詫びなどいらん。結局はわしもミルザ嬢を利用したんだからな。ミルザ嬢、改めて礼と謝罪を受けてくれ。悪しき者からリュークを護ってくれてありがとう、それからこの国の為に茶番に巻き込んですまなかった」


 よくわからないけど父と王は利害が一致してたの?

 父は私をこの国に連れてきたかったし、王は……何がしたかったのかな?

 私が不思議そうな顔をしているのに気付いたのか王が説明してくれた。


「ミルザ嬢、この国に来て気づかなかったかな? 明らかに精霊の数が少なくはないか? 」


 うん?

 精霊の数? って言っても私はこの国以外に人の国に行ったことないしな〜。

 比べようがないけど。


「ああ、そうか。精霊の森とこの国しか見ていないから気付かんか。いや、馬鹿にしているわけではないからな。だからミルザ嬢の友人達はこちらを威圧するのは止めてくれないか」


 一回切れたせいか友人達の怒りの沸点が低くなっているようだ。

 あ、そういえば私もさっき床を凍らせていたっけ……戻しとこ。


「うむ、寒さもなくなり良かった。それでだ、精霊の数なのだが今この国は他の国に比べて半数ほどしかいない。理由は……恥ずかしながらミルザ嬢も気づいているのではないか? 精霊を見られる者が減っている。そのせいか精霊への理解も著しく落ちている。貴族の中にはそのことを憂いているものもいるが、見えない者が増えているせいかその考えが少数派になりつつあるのだ。しかし実際少しずつ確実にこの国に異変は起きているんだ。見えないということは精霊に感謝をする者も減るからな、精霊は自分のことを信じてくれる者がいる国へと行ってしまう」


 回りくどい言い方だけど、これは自国民……いや貴族にか、精霊の存在を再確認させたかったのか?

 その為に私をこの国に呼んだと。

 ……んで、この後はどうするの?


「私は客寄せということだね。じゃあ、この後は? 」


 一発大魔法でもぶちかませばいいのかな。

 いや、精霊の存在を再確認させたいなら友人達とのふれあいかい?


『いや、特に何もしなくても良い。これだけやればもう分かっただろうし、これからは自分達でも調べるだろう。もしも精霊の力を悪用しようとしたら……まあ、そんな馬鹿が現れたら全力で遊んであげるさ。なんたって精霊は面白いことが大好きだからな』


「私の役目は終わり? 」


 私の言葉に父はこう答えた。


『ミルザはどうしたい? いつも「私は別に」と言って特に何も言わないが。何かあるなら言ってみなさい』


 どうしたい……か。

 私は……。





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