第七話
フローラさんは周りをぐるりと見回し……え? こっちを睨んできた。
ま、まさか、まだ理解していないの?
いやいやさすがにそれは、と考えていた私にフローラさんが叫んだ。
「こ、この化け物! この国をどうするつもり! 」
う、嘘でしょう。
これには私もびっくりした。
思わず友人達に助けを求める程に。
だけどその友人達もまた私以上に混乱していたようだ。
『な、なんだ、こいつ』
『もう、怖いよ〜、何でわかんないの? 』
『アレだな、なんか分かんないけど自分の力に酔い過ぎだ。おい、ミルザ、もう良いからそいつに全部教えてやれ。俺たちもしょうがないから出ても良い』
あ〜〜、さすがの友人達も姿を出す気になったらしい。
ある意味フローラさんスゴイよ。
じゃあ、まずどこからいこうか。
そうだな〜、とりあえずあの子の事は言わないと。
「ねえ、フローラさん。たぶんあなたはそこにいる魔術師の人達よりも自分の方が力が強いなんて勘違いしているんじゃないかな? 」
「何を言っているの。魔術師の方達は……王に仕えているのよ! 強いに決まっているじゃない。ただ、私だけがこの状況を分かっているのは光の属性があるからよ」
なるほど、そう来たか。
真正面から自分の方が力があるとはこの場で言えないよね。
「じゃあ、ずっとあなたの側に仕えていてくれていた子のことは見えている? 」
「何のことですの? 私の侍女はお城にまでは来ないわよ」
やっぱり見えていないか……。
さっきから心配そうにこちらを見ながら泣きそうになっている子を。
「……そう。ならそれこそが証拠ね。あなたの魔力は低いというよりもまだ身体に馴染んでいない。それから光の属性が貴重なもののように言っているけど、属性の価値に低いも高いもないからね。この国ではたまたま光属性が出にくいだけだから。さてと、ねえもうそろそろ姿を見せてあげようか」
私はそう言うとフローラさんの近くにいるその子の頭に手を置いた。
その子が見えていないフローラさんは奇妙な物を見る目で私を見ている。
私は構わずその子に光の魔力を注いだ。
その子の力は今弱まっていたから私が少し助けてあげ、自力で姿を現せるように。
「これで出来るでしょう? 」
私の問いかけにその子はゆっくり頷き、そして普通の人にも見えるように力を解き放った。
フローラさんの隣に光が集まり、そしてその光が一瞬大きくなり弾けた後、半透明の光る幼女が現れた。
「え? な、何ですの? こ、これは……せ、精霊? 」
フローラさんが信じられないような目でその子を見ている。
私にくっ付いてこの国に来てからずっとフローラさんに付いていた子だ。
この子はまだ生まれてからあまり時間が経っていない……だからフローラさんに付いちゃったんだよね。
「あのねフローラさん、あなたが突然光の魔法が使えるようになったのはこの子のおかげなんだよ。この子はたまたま私にくっ付いてこの国に来ちゃったんだけど……まあ、いろいろあってあなたにくっ付いちゃったんだよね。とりあえず、私がこの国を出たらこの子も帰るからフローラさんは光魔法使えなくなるから」
私の言葉にフローラさんは混乱しているようだ。
「光魔法が使えなくなる……。な、何でよ! 私は光の属性に目覚めたのよ! なのに何故あなたがこの国から出たぐらいで私から光の魔法が消えるの? 」
「まあ、普通に自力で属性が付いたなら私が居ようが居まいが関係ないんだけど。フローラさんの場合は私に付いて来たこの子が近くにいることで光魔法が使えているんだよね。その証拠に魔法が使えても精霊は見えなかったでしょう? 普通は見えるから。だからさっきから魔術師の皆さんはあんな状態なんだよ」
そう、魔術師の皆さんは一定距離を置いてこちらを窺っている。
彼等にはさっきからいろいろ見えてしまっているんだろうね。
「そんな……私の魔法が……。あ、あなた何者なの、他国の王族に連なるっていうことだったけど、何故こんなことが出来るの? お、おかしいわよ! こんなことが出来るなんて、まるで人じゃないみたい」
フローラさんの言葉に離れた場所から叫び声が聞こえた。
そちらを見れば復活した王が何やら騒ぎ立てている。
なになに、「それ以上暴言を言うな! 」…… なるほど、さっきのフローラさんの言葉にだいぶご立腹のようだ。
まあ、あながち間違いとも言えないんだけどね。
人じゃない……か。
『おい、そこの金髪。ミルザをこれ以上傷つけるのヤメろ』
『バーカ、バーカ』
『正直、お前の言動の方がよっぽどおかしいぞ。ミルザ、気にするな。お前には我らがいる』
その言葉と共に我が頼もしい友人達がようやく会場に姿を現した。
さっきのフローラさんに付いていた子と比較できないほどの魔力と共に。