埋葬 (3)
二人は静かにタイラの話を聞いた。
ここ数日間に、ロミファが衰え、どんどん死に近づいて行ったこと。その間、タイラは暖炉に小さい火を起こし、ロミファの命をつなごうと試みたこと。
「火の巫女は火から力をもらうものなのです。ですから、火を灯していればいいのではないかと、祈るような気持ちでした」
この屋敷に一人残されてしまったタイラのことがマミリは気になった。
「どうするの? タイラ? これから…」
「あたしは大丈夫。まずここを整理して。それからやりたいこともあるし…」
「ぜひ、ジルにおいで下さい。あなたが暮らせるように何もかも揃えます」
とジャストランドが一途にタイラを見つめるのを見て、マミリの心は痛くなり、この場にいることが辛くなった。
「じゃあ、とにかくあたし、仕事に行くけれど…。何か困ったことがあったら、言いに来てね。きっとよ」
とマミリはタイラに手を差し出した。
「ありがとう、マミリ」
とタイラはマミリの手を握った。
それから不思議な感覚でマミリは屋敷の外に出た。もう悲しくはなかった。なんだか広い砂漠が広がってしまったような、空虚な気持ちだった。
ジャストランドはタイラを手伝って、屋敷の裏に大きな墓穴を二つ完成させ、埋葬を手伝った。
タイラがもうだいぶ掘り進めていたので、午後ほどなくして作業は終わった。
ジャストランドはこのままずっとタイラと一緒にいたいと思った。
「今日、わたしはあなたとここで一緒に過ごして良いでしょうか? それとも、とりあえず一緒にジルに行きませんか? ここで続けてなにかなさる必要があるなら、あとでまたここに戻って来ても良いのだし…。ジルに行けば食べ物も充分にあるし、ゆっくり休める。あなたの気晴らしになると思うけれど…」
「ごめんなさい。あたしは今日は一人でいたいのです。いえ、今日だけではなく、気のすむまで一人でいさせて下さい。まだまだ母とルーズとお別れをする時間が必要なのです」
そうい言われてジャストランドはどうすることもできなかった。
ジャストランドは心が引き裂かれたような気持ちになり、ランドンを走らせジルに帰って行った。
それから約ひと月の間、タイラは森から外に出ず、館の中を片付けグアラ達と話し、森で過ごした。




