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クロウ   作者: 辰野ぱふ
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ラルクレの農場 (1)

 ムーニーの八百屋に向かって右の道を入ると、ラルクレの農場がある。

 そこはただの草地だった所で、最初は小さい農場だった。

 ラルクレはむっつりとあまりしゃべりもせず、ただただ畑を耕し、作物を育てるのが好きだった。

 ときどき出かけるセロトの市場で新しい野菜を見つけると、その種を探し、だんだん育てる作物が増え、また、毎日農場で採れたての野菜を食べていると、なにか力の元のようなものが身体に入ってくるようで、色の違いがわかるようになり、大きく自由に育つように気を配ると、気候がわかるようになり、土の違い、水のやりかたがわかるようになり、とにかく畑で野菜といる時がいちばん気持ちが晴れ、落ち着くのだった。


 別に家にいるのが嫌いというわけではなかったが、家はいつも騒がしく、自分の居場所がないようで、むっつり食事をしている間にも、やれパン屑がこぼれたとか、ソースがあふれたとか、ジャニがドニのポテトを横から一つ食べたとか、バリーが魚をよく見ないで食べて骨がひっかかったとか、ドニがその背中をたたき、バリーが大泣きし、食べ物は飛んでくる、飲み物は飛んでくる。

 ラルクレはその騒ぎにちっとも着いて行けないので、もくもくとそのまま食事を続けるしかなかったのだ。

 

 その三人のいたずら息子たちが家を出て行ってしまって、前よりは静かになってしまったが、ムーニーは相変わらずおしゃべりで、

「ラルクレ! 今日の大根、なかにスが入っていたのが三本もあったわ。だからおまけしておいたけど、今度は上手に作ってね!」

「ラルクレ! ブロッコリーは日に当たるとすぐに黄色くなってしまうのね! 失敗したわ。こんどはちゃんと陰に置くようにするから!」

「ラルクレ! ねえ、明日はキュウリをもっとたくさん採って来てほしいの。もうおいしいって評判でね、今日は午前中に売り切れてしまったのよ!」

 もう、ラルクレ、ラルクレ、ラルクレとうるさいから、話は聞きたくもないのだが、野菜がほめられればうれしいし、けなされればくやしいし、その感情はちっとも顔には出ないのでムーニーは気がつかないようだが、とにかくなんだかその言葉は頭の中で繰り返され、野菜作りに力が入ってしまうのだ。


 マミリは悪ガキを怒ることがなくなったせいか? 最近はおとなしい娘になったようで、ムーニーの声ばかりが聞こえていた。

 だが、ある日、急にマミリが宣言したのだ。

「あたし、畑を手伝うわ」

 そして、なんだか怒ったように、

「あいつらにも手伝わせる! 絶対!」

 と言い、

「だって、あたし農場のことを勉強したから!」

 と言った。

 ラルクレがむっつりと、野菜のことだけを考えている間に、マミリはセロトの農学校に行っていたらしい。それをまったく知らなかったのだ。ラルクレは自分でもびっくりした。


 ラルクレの農場はどんどん大きくなっていたので、近くの家族にも手伝いを頼み、野菜の収穫量もだいぶ増えていたのだが、マミリはそれをセロトに売りにいっていたらしい。

「あたしは経営の方をやるから、あいつらには畑をやらせる! 絶対!」

 とまたマミリは宣言した。


 だが、それはそんなに簡単なことではなかった。マミリが三人の所に通い、叱り、説得してもドニはぼーっと聞いているだけだったし、バリーはケラケラ笑っているだけだった。

 ジャニだけがどうにか、しぶしぶと、畑を手伝うことになり、畑の近くに小屋を建てた。


「ジャニ! 農場の仕事はすばらしいことよ! パパを見て! いつもおいしい野菜を作っているから、いつだってうちのやおやは繁盛しているし、あたし、ちゃんと経営のことを勉強したから、今はセロトでもうちのテントには列ができるのよ! おいしい野菜が作れると、女性がたにもてもてになるわよ!」

 ジャニの頭にはムーニーの姿が浮かんだ。

 ママみたいな女性にもてもてになるのか? あまりそんなに、うれしいことでもなさそうだけれど…。でも、たしかに、やおやに買い物に来る人は女性が多いし、その中にはもちろんきれいな人もいるし…。

 マミリは最近、同級生だったアンジェにセロトでの商売を手伝ってもらっているのだが、マミリと同じ年だから、ジャニよりは年が上だけれど、ジャニはずっとアンジェにあこがれていたのだ。

 ジャニは馬車の操縦を習得していた。だから、マミリ、アンジェを馬車に乗せ、セロトに野菜を運ぶ仕事は楽しかった。


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