ジャストランド (3)
「やあ。初めてとは思えないですね」
とクッチマムがバスケットを持ってやって来ていた。
「どうぞ、ランチです」
丘の端にある切り株の椅子まで皆で歩くと、ひとつの切り株をテーブルにして、白いレースのクロスを敷き、バスケットからサンドイッチ、果物、ビンに入った飲み物を並べ、
「さあ、どうぞ」
と言って行ってしまった。
「まあ。クッチマム様はお食べにならないのかしら」
「だいじょうぶです。兄さんはいつもパッパっと、仕事と仕事の合間に食べてしまうのです」
「あたし…、今日、馬で館まで帰ることができるかしら…」
「え? それはやめておいた方がいい」
「そうですよね…」
「機関車でお帰りになるといい」
「そうですよね…」
それから二人はだまって食事をした。
「そうそう。あたし…、ジャスミン様にお目にかかった方がいいかもしれないわ」
食事が終わり、タイラが言うと、ジャストランドは驚いて、
「い、いや、今は無理です」
と言う。
「え? でもクッチマム様がお目にかかった方がいいと…」
「え? どうして?」
「ええと…。その…。なにかわかるかもしれないと…」
ジャストランドは意味がわからず、じっとタイラを見つめた。そして、
「いいや、なにもわからなくてもいいのです」
ふと暗い表情になった。
「では、とにかく、そろそろあたし、帰ります。あたしの母も病気で寝ていますので、長いことを家を空けたくないのです」
二人はそれぞれの馬に乗り、馬小屋へ帰った。
「また来ていいですか?」
とタイラが聞いた。
「ええ、もちろん」
とジャストランドが言った。
ジャストランドはこのままずっとタイラと居たいと思った。だがそんなことは言えない。強く引き付けられる気持ちを振り切るように、ランドンにまたがると、その自分の後ろにタイラを乗せ、駅まで一緒に送った。
駅にはまたカラスが集まって来ていて、空を舞っていた。タイラがきつい目でカラスをにらみつけたからか? 静かにしている。
「もう、ほんとうに、いやだわ。いつでも着いて来て…」
タイラに着いて行ってみたいという気持ちがわかり、ランドンはなんだか恥ずかしくなった。
「また来て下さい」
「ええきっと」
機関車に乗るタイラを見送り、ランドンはいつまでも手を振った。




