ムーニーのやおや(3)
でも、マミリが感じていることをそのまま弟に言ってはいけないような気がした。そんなこと言ったら、ジャニ、ドニ、バリーはいろいろおもしろおかしく、話を百倍くらいに大きくして、いたずら仲間に伝えるだろう。
「ああ、子どもって、これだから、いやだわ」
マミリだってまだ十一歳だけど、ジャニ、ドニ、バリーと自分は違うと胸を張って思っている。絶対に違う。だから弟だからといって、油断してはならない。ちゃんときっぱりと線引きをしておかないとね。
そこにシャリーがお使いに来た。
「おばさま、こんにちは」
「あらあら、シャリー、ママは元気?」
「はい、おかげさまで」
言いながら、シャリーはチラチラマミリの方を見ていて、なんだか話したそうにしているのがわかった。
「今日は、熟れたトマト五個、たまねぎ二個、ニンジン二本、シイタケ三枚、じゃがいもを十個お願いします」
シャリーはすまして、メモを読み上げた。
「はいはい。これと、これ。それにこの青豆はおまけ。ラルクレの新しいお豆よ」
シャリーは持って来たこげ茶色のかごに、野菜を入れてもらった。
マミリはこっそりムーニーの後ろから、目配せして、八百屋の店の左側からちょっと裏に入った所でシャリーを待った。
「ねえ。これこれ。食べてみて。新製品。ルバーブジャムのサンド」
シャリーは自分の家で新しく売り出した、クラッカーのサンドを持っていた。
「うれしい! シャリーありがとう!」
「おばさま、トマト二個、玉ねぎ一個、ジャガイモまでもおまけしてくれている。おばさまにもそのサンド、あげてね。かならずね」
「わかってる! それよりさ…」
マミリはムーニーとタイラのさっきのやりとりのことを話したくてシャリーを呼びつけたのだけれど、ジャニ、ドニ、バリーがいつの間にかシャリ―の後ろにくっついて来ていて、シャリーがマミリに渡した紙袋を食い入るように見つめていた。
(まったく、これだから弟ってやつは、ほんとうにいやだわ)マミリは心の中で思った。
マミリはしかたなく、今言いたかったことをごくりと飲み込むと
「明日、学校でね!」
シャリ―にウインクした。
「またね!」
「またね!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
マミリは弟たちに、袋をさらわれないように、しっかり抱えると、
「うるさくしたら、お菓子、あげないからね」
プイと怖い顔になって、弟たちをにらんだ。