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おまけ②四人で話合いましょう

 おまけ②【四人で話しましょう】













 鳳如がいなくなってしまってから、四人は初めて会議を行う事にした。

 「よーし。じゃあ、始めるぞ」

 「始めるって、何を話すの?」

 「帝斗、俺も暇じゃないんだ。さっさとしろ」

 「俺もアイスを食べるところでした」

 「なんだよお前等!鳳如がいない間、ここは俺達で守らねえといけねんだぞ!?わかってんのか!?」

 いつにもなく気合いの入っている帝斗に、麗翔は怪訝そうな表情をする。

 それでも、まだ帝斗は続ける。

 「清蘭様ももちろん、部下たちのことも結界のことも全部全部全部!!!俺たちだけでやっていくことなんだ!!だからこそ、四人が協力することが大事になる!そうは想わないか!?琉峯!!」

 「・・・まあ、間違ってはいないかと」

 「そうだろ!?石を受け継ぎ、確かに俺達は強くなった。だがな、今までの敵は倒せても、これからくる敵に勝てるとは限らないんだ!それぞれがそれぞれの出来ることを精一杯やらないと!!!守りきれないかもしれないんだ!!!だろ!?煙桜!?」

 「んなこと分かってる」

 「だとしたらだ!!!俺達は、自分たちの力を全て理解し、把握し、それぞれの力も知ることで、より強く、より高みを目指せるのではないかと思っている!!!俺達が力を合わせれば、きっと誰にも負けない!しかしそれは、今よりも自分の力を発揮できるようにならないといけない!!!!そうは思わないか!?麗翔!!!」

 人差し指をぐいっと麗翔に突き刺すと、麗翔は目を細めた状態で、ゆっくりと口を開いた。

 「帝斗、あんた何か企んでるの?」

 「・・・一体何のことかな?」

 明らかに不自然な帝斗の様子に、煙桜と琉峯も帝斗をじーっと見る。

 この時の帝斗に効果音をつけるとすれば、ギクッ、だろうか。

 「帝斗、正直に言いなさいよ?」

 麗翔たちに一斉に取り囲まれるが、帝斗は断固として口を閉ざしたまま。

 三人に攻め寄られても何も言わない帝斗に、煙桜は目を細めて言った。

 「縛ろう」

 「賛成」

 「はあああああ!?」

 「琉峯」

 「はい」

 琉峯がにゅるにゅると植物を出すと、帝斗の身体を縛りつけた。

 ただの植物ならまだしも、食虫植物という名の、人間までも喰らうかもしれない大きな植物が、帝斗の傍に寄ってきた。

 顔を引き攣らせながら、解いてくれと頼んだ帝斗だが、逃がしてはもらえない。

 「正直に言え。今言え。じゃないと、お前、丸刈りにしてやるからな」

 「煙桜さん煙桜さん、冗談言うならもっと笑えること言って」

 冗談を言っているのか、それとも本気なのか、煙桜の手にはバリカンが握られていた。

 電源を入れると、ブーンと機械音が耳に響いてきて、それがどんどん帝斗の髪に向かって近づいて行く。

 徐々に顔を青くしていった帝斗は、ついに叫んだ。

 「わかったわかった!!!!!話す話す話す話す話すから!!!!!電源切れ!煙桜離れろ!!!近づくなーーーーー!!!」

 間一髪のところでバリカンを止めると、煙桜は残念だったのか、小さく舌打ちをした。

 しかし逃がすわけにはいかないので、縛ったまま。

 しぶっていた帝斗は、観念したのか話し始めた。

 「実はさ・・・」




 「はあああああああ!?鳳如の盆栽を壊したあああああああ!?」

 「へへ。ちょっとついって肘がぶつかったみたいで、そのまま・・・。いやー、重力って怖いなー。ニュートンってすごいなー」

 「すごいなー、じゃないでしょ!?鳳如、あの盆栽大事にしてなかった!?なんでか知らないけど、大事にしてなかった!?どうすんのよ!?」

 「・・・盆栽の元は壊れていないなら、鉢だけ変えると言うのは・・・」

 「琉峯!ナイスアイデアよ!!!そうしましょ!今どこにあるの!?」

 「そ、それが・・・」

 盆栽を持ってくるようにと言って植物から解放する。

 帝斗が出したその盆栽は、無残にも枝がぽっきり折れていた。

 ソレを見て、麗翔は口を大きくあけているし、琉峯は口を閉ざしてしまった。

 すると、そんな三人を他所に煙草を吸い始めた煙桜に、麗翔は帝斗よりも慌てた様子で叫ぶ。

 「煙桜!煙草なんか後にしてよ!今それどころじゃないでしょ!?」

 帝斗はてへへ、と笑って誤魔化していると、煙桜が煙を吐きながら、帝斗の方を見ずにこんなことを言った。

 「お前、ただじゃ済まねえぞ」

 「・・・え?」

 煙草を口に咥え、また煙を出しながら、煙桜はゆっくりと帝斗を見る。

 その鋭い目つきに、帝斗だけでなく、麗翔も琉峯も、思わずゴクリと唾を飲み込む。

 その煙草を吸い終えると、煙桜は火を消しながらこう告げた。

 「その盆栽はな、鳳如にとって形見なんだよ」

 「か、形見・・・?」

 「ああ。誰のかは知らねえが、大事な人からの贈り物らしい。その人はもう亡くなっちまってて、鳳如はその人を思い出しながら盆栽の手入れをしてたなぁ・・・」

 「う・・・嘘だろ・・・」

 鉢が壊れてしまっているだけならまだしも、枝まで折れてしまっているとなると、もうどうにもならない。

 別のものを買おうと思っても、きっと盆栽は変わっていることに気付いてしまうだろう。

 なんてことをしてしまったのだと、帝斗は壁に両手をつけて、項垂れていた。

 その横で琉峯が帝斗の背中を摩っている。

 煙桜は次の煙草を口に咥えると、マッチに火をつける。

 そして煙草に火をつけようとしたところで、帝斗が両手をブランとさせながら、部屋を出て行った。

 盆栽を持ったまま、帝斗は自室へと戻ると、どうにかして戻せないかと、枝をくっつけてみたりした。

 思考がまともに働いていないのか、琉峯に頼むという考えはなかったようだ。

 帝斗が部屋から出て行ったあと、麗翔はふと何かを思い出したように言った。

 「でも、私、鳳如が盆栽いじってるところなんて見たことないけど、琉峯ある?」

 「・・・・・・」

 麗翔の問いかけに、琉峯は黙ったまま首を横に振った。

 大事にしていたといっても、麗翔が見たのは、ある日突然盆栽を抱えて部屋に入っていった鳳如の姿だけだ。

 「煙桜は見たことあるの?」

 「いや」

 「え?どういうこと?」

 ぷはー、と煙を吐きながら、煙桜は首をコキコキ鳴らした。

 最後に首をぐるっと回すと、呆れたようにこう言った。

 「ありゃ俺が押し付けたやつだ」

 「押しつけたって?」

 「・・・・・・」

 煙桜が言うには、おろちが盆栽にはまって盆栽を集めていたらしいのだが、ある日突然飽きてしまって、その中の一つを煙桜に渡してきたらしい。

 煙桜はいらないと言ったのだが、おろちが強引に渡してきたため、邪魔だから鳳如に渡したとか。

 「あいつがんなマメなことするタマかよ」

 「確かに。雑草でさえ育たないと思うわ」

 「・・・・・・」

 「じゃあ、なんで帝斗にあんなこと言ったのよ。帝斗、顔青くしてたじゃない」

 「いーんだよ。てめぇでしたことくらい、てめぇでケツ拭けなくてどうすんだ」

 「元凶はあんただけどね」




 その日の夜、帝斗は琉峯の部屋に行って、元に戻してくれるよう、土下座をして頼んできたらしい。

 琉峯が事の真相を伝えると、帝斗は大喜びし、夜中にも係わらず元凶である煙桜に文句を言いに行ったところ、見事にアッパーを喰らって大人しく帰ってきたようだ。

 帝斗は、学んだのだ。

 「寝てる煙桜には近づかない」


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