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第8話前と後ろどっちでもイケる派です

「……なぁ、もう一回聞くけどあれ本当にユグドラシルなんだよな」


 俺は今日何度目かの質問をする。


「……そうよ? 何回も同じこと聞いてどうしたの?」


「いや、だって……」


 エルザは当たり前でしょ? といった感じに答えるが、俺にはそれがどうしても信じられない。


 俺たちは万病を癒す神薬ユグドラシルを買いウルの家へと向かっていた。

 ユグドラシルは無事買えた。

 ……うん、今ウルが持っているアレがユグドラシルだというなら無事買えた。

 問題はアレが本当にユグドラシルなのかという事だ。俺にはその見た目からどうしてもそうとは思えない。


 複数の小さな玉が一つに連なった……つまりア〇ルビーズのような形状なのだ。

 いや、というかもうア〇ルビーズにしか見えない。ア〇ルビーズそのものだ。


「えっと、あれどうやって使うんだ?」


「そのまま飲み込むのよ。それか、お尻に直接入れることね」


 おい、やっぱア〇ルビーズじゃないのか。


「でも、あれ服用するの大変なのよね。飲み込むの結構しんどいし、お尻からは痛――」


「ちょっとまて! エルザ! おまえこれ使ったことあるのか!? あるのか!?」


 俺はエルザのまさかの感想に詰め寄り、食い気味に問いただす。


「え、うん、小さい頃に何回かあるわよ?」


 なんということだ! 

 エルザのお尻はすでにアレで貫かれてるというのか! 

 ユグドラシル(アレ)を! 

 お尻に! 

 入れてしまっているというのか!


 俺はア〇ルビーズ、もといユグドラシルを使うエルザを想像してしまい、つい刻印が光る。


「二人とも何やってるっすか! ついたっすよ!」


 そんな妄想をしていると俺たちの前をいくウルから声がかかる。

 ウルの言葉に俺は妄想するのをやめ、きちんと前を見る。だが


「え? どゆこと?」


 目の前には家らしきものはない、それどころか周りを見渡してもあるのは生い茂った木々ばかりだ。


「おい、ウル何言ってるんだ? 何もないじゃないか、道間違えたんなら素直にそう言えよ」


「違うっすよ! ちゃんとついたんす! ちょっと待っててくださいす」


 ウルはそう言い自分の名前を口にする。

 すると目の前の木々は消え、庭のある大きな木造二階建ての一軒家が突如、姿を現す。


「うわっ! すげー! 急に家がでてきた。

 ……これって魔法だよな?」


「……ただの魔法じゃないわ。すごい上級の幻影魔法。

 普段は姿を消して森の一部として擬態しているんだわ。

 こんな魔法使えるのなんて世界にもそう居ない。これウルちゃんが掛けているの?」


 エルザは感嘆の声を漏らしながら聞いた。


「いや、ウルじゃないっす。ママが掛けた魔法っすよ。

 ウルは魔法をつかえないっすから。 

 そんなことより早く中に入るっす!」


 魔法に驚いている俺たちを急かすようにウルは言う。


 そして、俺たちは言われた通り家に入る。

 家の中は質素だがとても広い家だった。物が少ないせいかより広く見える。


「こっちっす」


 ウルはそう言い手招きする。リビングの隅にある階段を上り、二階のとある一室へといく。

 どうやら、ここがウルの親父さんの部屋らしい。


「パパ、はいるっすよ」


 ウルは扉をノックし中へと入る。俺たちもそれに続く。


「あぁ、ウル、おかえり。何処に行って――ごほっごほっ」


 そこにはベッドで寝込み咳き込んでいる男性がいた。


「パパ、大丈夫っすか? 無理しちゃダメっすよ。ちゃんとご飯は食べたっすか?」


「……心配かけてすまないね。ちゃんと食べたよ。ところであちらの方々は?」


 ウルの親父さんは体を起こすと俺たちに気が付き、ウルに説明を求めた。


「この二人はノラとエルザっす!」


「どうも、黒神ノラです。お邪魔しています」


 俺は軽く会釈をし挨拶をした。それと対照的に


「えと、あのエルザっていいます! ウルちゃんとはお友達? でえと、その……! なんていうか……とりあえずお邪魔しています!」


 エルザはものすごいどもった挨拶をする。


_______________________________________




「いつも娘が世話になっています。私はロランというものです。こんなお見苦しい姿で申し訳ない」


 ロランさんは丁寧な口調でそう言い、頭を下げた。


 この人がウルの親父さんか。優しそうな人だな。


 物腰が柔らかそうな人だった。しかし、その見た目は病気のせいかとてもやつれている。


「それよりパパ! これを見るっす」


 そんなロランさんにウルは得意げにユグドラシルを差し出す。

 そして、それをみてロランさんは驚愕する。


「これは……ユグドラシル! こんな高価なものどうやって……」


「それは後で説明するっすから、はやくこれを使うっす! きっとよくなるっす! 口からいくっすか? お尻からいくっすか?」


 喜びからか急かすようにウルはユグドラシルの服用方法を迫る。


 そんな二人を見て、俺は

 ……男がそれを尻に入れるのはあんまり見たくないなぁ

 とか思ってしまう。

 すると、それが顔に出てしまったのか


「はは、お客さんもいることだし、口からにするよ」


 と、ロランさんは微笑みながら言った。


 そして、それを聞き、エルザは水を入れてくると部屋を後にする。


 ロランさんは期待の表情をするウルを一瞥するとユグドラシルを口から飲み込んだ。


「パパ……どうっすか?」


 少し不安げに訊くウル。

 しかし、そんな不安は杞憂なようでロランさんの見た目はみるみるよくなっていく。血色は良くなっていき、さっきまでどこかしんどそうな顔をしていたがそれもなくなる。


「うん……体が楽になっていくのがわかる。治ってきているみたいだ。……ウル、ありがとう」


 そう言いウルの頭を撫でる。

 ウルもとても幸せそうな表情をしていた。


 まぁ、なんにせよこれで一件落着か、良かった良かった。


 俺もそう安心した途端、


「それにしてもこれはど――ぐっ! ごはっ!」


 ――ロランさんの様子が変わる。


 突然、口から血を吐き出し、倒れてしまったのだ。


「パパ!! どうしたんすか!? パパ!!」


 喀血しながら苦しそうに呻くロランさん、それに駆け寄り声を荒げるウル。


 どういうことだ? ユグドラシルは効いたんじゃなかったのか?

 それとも……やっぱりアレはユグドラシルじゃなかった……?


 俺はこんな状況に今までの懸念が頭をよぎる。


 すると、どこからともなく女性の笑い声が部屋に響き渡った。

 そして、苦しむロランさんの体からは禍々しい黒いもやが出てくる。




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