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27話空舞う火の鳥

 フェイザー達の所に姿を現す少し前。

 俺はフラムにパンツをかぶらされた。まるで仮面のようにかぶらされたパンツはほんのりと暖かい。そして、どことなく酸っぱいような甘いような妖美な匂いがする。


「フラムさん!? 何で私のパンツを剥ぎ取ってノラに被せたのよ!? 新手のいじめか何かなの!? こんな外でノーパンにされて、もうお嫁にいけない!!」


「いえ、ノラさんがこれで少しでも興奮して絶対的破壊者テクノブレイクが使えないものかと思いまして。やっぱり今はこれしか方法がありませんから。それに私も下着はつけておりませんから大丈夫ですわ」


 確かに普段の俺なら一発で理性を持っていかれ、すぐさま襲い掛かる猛獣となってしまっていただろう。しかし、今俺は賢者モードだ。こんなパンツ一枚で興奮などしない。ただ前が見づらいだけだ。あと、フラムには今度ミニスカート的なものを履いてもらおう。


「おいおい、さっきも言っただろうフラム。俺は今賢者モードだからこんなんじゃ興奮しないっての」


「でも、むっちゃ光ってるすよ?」


 ウルにそう指摘され、自分の右手を見ると、刻印は燦燦と光り輝いている。


「え、どういうことだ? 俺全然そんな気持ちじゃないぞ!?」


 そう、俺は今ムラムラしているとか、エロイ気持ちにはなってないのだ。しかも、今気づいたがやけに体が軽い。自分の体じゃないみたいだ。

 すると、俺は地面に何か落ちているのを発見する。

 拾い上げ、確認すると、それは俺のギルドカードだった。

 最初のフェイザーの爆発でここまで飛ばされてしまっていたのだろう。

 あの爆発で無事とかかなり頑丈にできているんだなとか最初は思ったが、そこに記載してある数字をみて、そんなことどうでも良くなった。


「レベル…………68!?」


 もちろん今の俺はこんな高レベルではない。

 グレガスを倒した時点で12レベル。そして、ヘルメス洞窟のドラゴンや色々な魔物を倒して、16レベルまでは上がっていたが、なんでこんな急激に……?


「な、なぁこれって俺のギルドカードで合ってるよな……?」


 もしかしたら俺の見間違いか何かと思い、それをみんなにも見せる。


「ええ、これは紛れもなくノラさんのものですわね」


 しげしげとカードを見たフラムはギルドカードに表示されている数字に困惑しながら答えた。


「誤表示でもされてんのか?」


「いえ、それはあり得ませんわ。ギルドカードの表示は絶対。間違いなんて」


「…………ねぇ、ノラ。もしかした――」


不死鳥の嫉妬ポイニクス・アイサソッツァ!!」


 エルザが何か喋ろうとした瞬間、後ろの穴から声が轟いた。

 それは紛れもなくフェイザーの声。

 俺はその声に不思議と嫌な予感を感じた。

 そして、そう感じたのは俺だけではなかった。


「ノラさん! 何が起こっているのかわかりませんが私の思惑通り刻印は光りましたわ! そのままフェイザーの呪術を解除してください! それさえできれば何が起きても私が何とかします!!」


 フラムは焦ったように声を荒げた。

 俺も急がないといけないと感じたので力強く頷くと穴に向かって走り出した。

 ただ、エルザが何を言おうとしたのかが、心の隅に引っかかっていた……。


 _______________________________________



 本当にステータスが上がっているようで穴まではすぐ着けた。自分でも驚くようなスピードが出たのだ。

 そして、下を見るとそこには肩膝をついて腹部から血を流すヒロ。そして、そのヒロに攻撃をくわえようとしているフェイザーがいた。


「まてえええええええええええええええい!!!!」


 俺は叫んだ。フェイザーに負けない爆音で、注目がこちらに向くように。

 そして、俺の目論み通りフェイザーの動きは止まり、こちらを見てくる。


「ハッ! 戻って来たか! だが、何だそのちんけな格好は道化にでもなったか!」


 フェイザーは嘲笑するように笑った。

 俺はその態度に苛ついた。

 そもそも、俺がこんな格好をしなければならなくなったのはこいつのせいなのだ。

 通常時だったら、エルザのパンツをかぶれたからとフェイザーに泣きながら感謝してたかもしれないが今は普通にむかつく。ただ、かといって今パンツを取ると、フェイザーにバカにされたから外したみたいな感じがして癪なのでそのままにした。

 その代わり、俺は思いっきり駆けた。フェイザーに一泡吹かせてやろうと思ったからだ。すると、案の定フェイザーはハトが豆鉄砲を食らったような顔をしている。

 そして、その顔を思いっきり殴ってやった。


 この後は自分でも驚いた。フェイザーの体はまるで銃弾ようにすっ飛んでいき、岩壁にめり込んだのだ。

 急激なレベルアップによるステータス強化――何があって、こうなっているのかは理解できないが、これのすごさはこれによって完璧に理解した。

 もし、これをいつでも出来るようになればどんな敵でも倒せるようになるかもしれない。

 その考えに行きつくと武者震いが止まらなかった。


「変わったとてつもない魔法を使うかと思えば、今度は異常な身体強化…………。最高かよてめー!!」


 崩れた岩壁からガラリと音を立てながら現れたフェイザー。

 俺は体の震えを静めるように強く拳を握りしめるとフェイザーをしっかりと見た。

 それと同時にフェイザーは動き出した。


不死鳥の羨望ポイニクス・アイサソッツァ・シュヴェア!!」


 フェイザーから放たれるまるで大蛇のような焔の矢。俺にはそれがしかっりと見えていた。

 なので、それをひらりと交わすとフェイザーに向かおうとした。

 しかし、躱した瞬間フェイザーの顔からにやりと笑みがこぼれているのがはっきりと見えた。


「それじゃだめだ!! 追尾してくるぞ!」


 ヒロの警告から何でフェイザーが笑っていたのか分かった。それと同時に、ヒロがなんで伏しているのかも直感的に理解した。恐らくこの攻撃の対処法を間違ったのだ。そして、俺も同じように間違った対処をしたと思っている。


「消し去る魔法を使わねーとそいつは回避できねぇぜ! だが、使えないんだろう!? 発動できるなら最初の攻防で今の身体強化と合わせて使っているはずだ!!」


絶対的破壊者テクノブレイク、発動」


 絶対的破壊者テクノブレイクにより、俺を追尾してきた焔の矢は触れると同時に消失した。

 その光景を見て、フェイザーは唖然としている。


「俺がいつ使えないって言った?」


「……………………ク、クハハハハハハッ!! なんじゃそりゃ!! 反則級じゃねーか! それならまたさっきの殴り合い――」


 俺はフェイザーが言い終わる前に一気に近づいた。

 そして、左手でそっと体に触れ、フェイザーにかかっている呪術を消すと、右手を使いそれとほぼ同タイミングでフェイザーの心臓部にあたる部位を貫いた。


「残念だが、もう戦いは終わりだ」


 フェイザーは衝撃を受けた顔を一瞬見せるも、俺の言葉と自分の状態から全てを悟ったのか力なく笑った。


「…………ちっ……もう終わり……か。最後に一ついいか? てめーの名前はなんだ…………?」


「……ノラ、黒神ノラだ」


「そうか…………その名前覚えとくぜ…………」


 フェイザーは満足そうな顔でそう言った。

 そして、その後フェイザーの体は文字通り火へと変化していく。

 その火はちぎれるように、飛び立つ無数の小鳥のように、空へ消えていった。








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