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第十八話 空論の机から立ち上がろう。

※15/09/04 アンリの会話の中の所が文字化けしていると聞いて《『○○』》に変更しました。

※他にも誤字の修正を全面的にやりました。見苦しかった方々に本当に申し訳ありません。


これからはもっと気を付けるようにしますが……何分ヘタレですのでこれからも誤字が続く、かもしれません。

温かい目で見守ってくだされば……。

では、これからもよろしくお願いします。



 シアンの宥める努力にも屈せず泣き続けていたプレリアは、30分も泣いた後に漸く泣き止んでくれた。

 そこでシアンはブリューネに温かいお茶を頼んでプレリアに勧めた。


 「はい。茶でも飲んで落ち着いてください。宰相閣下」


 (一体こんな涙脆い人がどうやって宰相にまで登ったんだろう)

 《『能力と感性は関係ないと思いますが』》

 (ごもっとも、と言いたいところだが宰相という仕事は能力より冷徹な感性の方が必要な職業だと思うけどな)

 《『涙の中にも冷徹さはあるものですよ。シアン様』》

 (……そんなもんかな)


 プレリアがゆっくりと茶に口を付けている間、シアンとアンリはそんな話を口にしていたがシアンはアンリの言葉に納得してはいなかった。


 当たり前の話だが、国のナンバー2である宰相は力を持つ存在だ。

 それは指の動き一つで人を殺せる力だ。そんな人なら時には冷静にその仕事をこなさないとダメだ。

 世の中にはシアンよりもっと大変な目にあっている人間が大勢いる。その人達全ての為に涙を流すことは出来ない。そんな甘っちょろい感性を持っては何れ自分が壊れてしまう。

 それが宰相という地位の厳しさだ。シアンはそう思っていた。


 だが、アンリの考えは違った。

 力を持っている人間は力の使い方の正負を問われる。だからこそ、自分の判断ミスとか、公平な視線が最も大事だ。

 涙の中に冷徹さはある。

 それは万人を憐れむ資質こそが公平さの引き金になる、という意味だった。

 だが、それをシアンは理解していない。

 それは教えて貰うより自分で身に付けるべき資質だと判断しているからこそ、アンリは何れ権力を手に入れるであろう自分の主にそう言うヒントだけの話をしていたのだった。


 「ありがとう御座います。もう落ち着きました」

 ティーカップをテーブルに降ろしてプレリアが姿勢を正す。

 「色々暗い話でしたね。すみません」

 「いいえ。私こそ無実な貴方を疑うようなことを言いまして、すみませんでした」

 「でも、本当にそうですね。早いとこ自分の無実を証明出来ませんと、なじまない王宮でずっとこんな思いするかも知れませんよね」

 「そ、うですね。本当に済みません」

 シアンは雰囲気を変える為に冗談交じりにそんなことを口にしてみたがまだ早かったようだった。慌てて両手を振りながら「冗談ですよ。冗談」と言ってみたが、あんまり効果はないようで、プレリアは眉間に皺を作って、


 「だけど、真犯人は早めに捕まえるに越したことはありません」

 「それは勿論そうですが、警備隊でも色々捜査してるんでしょう?まだ何日も経ったわけじゃありませんし。もうすぐ捕まるのでは?」

 「いいえ。違います。これは犯人の目的が問題です」

 「犯人の目的?」

 「はい。犯人は西門の警備隊を襲いました。通常、城門警備隊への襲撃は誰かを城内へ招くためか、城内から脱出させる為、扉を開けるのが目的になります。でも今回は城門は開いてませんし、警備隊にも何人の犠牲以外、追加的な被害はありませんでした。それは襲撃者に他の目的があったことを意味します」

 「警備隊員個人への恨みという線はありませんか?」

 「可能性はありますが、やり方が綺麗すぎます。全員一撃か、少なくとも三撃以内に命を落としています。コレは殺し屋の仕事と見て間違いないでしょう。」

 「じゃ、警備隊員が何処かと繋がっていて、それを狙った犯行では?」

 「私はむしろシアントゥレさんに冤罪を着せる為にこんな犯行をしたと考えていましたが……」

 「僕をですか?何の為にですか?」

 「だから、今回追及するためにここに来ました。でも、そうじゃなかった。なら……」

 

 そう言いながら考えに耽るプレリアに代わり、アンリが先に自分の推理を述べる。

 《『これは他国のスパイの可能性が高いと思います』》

 (スパイ!?)

 《『はい。背後関係は色々説明が必要ですのが最大限簡潔に纏めますと、警備隊は貴族側、シアン様はギルド側。つまり両側同士の衝突を狙った可能性が高いと思います。そうなら一番利益を得るのはこの国の人間ではありません。よって他国からのスパイの工作活動。それも以前から潜入していた常駐型スパイの仕業だと思います』》

 (マジか……)


 アンリの推理を聞いて話のあまりな大きさに唖然としてしまったシアンは、もしコレが当たっていたらまた戦争になるかも知れないと思い、ものすごく嫌そうな顔をしてしまった。

 戦争にいい思いをしている人間などいないが、その戦争で孤児になってしまったシアンにとっても、戦争はあまり起きてほしくないものだったのだ。

 だが、その表情がプレリアの関心を引いてしまう。


 「どうしてそんな顔になってるんです?何か嫌なことでも……?」

 シアンはそこで自分の感情を誤魔化す為に、プレリアにアンリから聞いた話を少ししてみることにした。

 

 「いやぁ。あくまで机上の空論でしかないと思って話していいか迷いますけど、この事件、ギルドと貴族間の亀裂をもっと大きくするために僕を狙ったのだとしたら、どうなるのかと思いましてね」

 「どうなるのか……でも、それは何時ものことですし……別に大した影響は……いや違う、死んだのがアンブロッテ子爵のご子息……ってあああ!!!」

 「どうしたんですか?いきなり大声出して!?」

 「シアントゥレさん。貴方はやっぱりすごいです!コレなら話が繋がる!犯人の目星が付くかも知れません!」

 「ちゃんと説明をしてくれませんと、なんの話かさっぱり分かりませんけど」

 「説明するには少し場所が良くありません!これは陛下にも報告する必要があることですから、場所を移しましょう!」

 「え?でも、陛下はもう寝所に入っていらっしゃるんじゃ……」

 「これは最重要案件です!陛下もお許しになってくれます!」


 

 ◇



 結局、シアンはプレリアの威勢に負けて国王の執務室まで移動した。

 直ぐ後に王宮の消灯時間になるにも拘わらず、国王マキアデオスは嫌な顔ひとつせずにプレリアの要請に応じて直ぐ執務室まで来てくれた。

 シアンはそれを見てアンリの推理が正しい可能性が高いかも知れないと緊張した顔で国王の向かいに立っている。


 「で、重要な話とは何だ?プレリア」

 「は、シアントゥレさんの冤罪の原因が分かりました」

 「ほぉ。それは重要だな。申してみよ」


 慣れているのか、それとも事の重大さに気づいているのかは分からないが、何故シアンを連れて来たのかも、この夜中にする必要がある話なのかも聞かずに、マキアデオスはプレリアに話を急がせた。

 許可を得たプレリアは自分の推理を口にする。


 「はっ。では結論から申し上げます。この事件の黒幕はあの裏組織、《ラ・ギルルスの剣》の可能性が高いと思います!」


 とても確信に満ちた口調で話したその言葉の中からは、何故か隠し切れない嫌悪感が顔を出していた。


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