CALL Ⅳ
「カツ! お前、何やってんだよ、こんな所で」
「え?」
顔を上げて、カツキは目の前に立っているリツキを不思議な気持ちで見た。
トサキが立ち去って、5分と経たないうちに、入れ違いみたいに現れた。
相変わらず、顎で使うような横柄な物言い。
すぐに、膝を抱えて座り込んでいるカツキを見下ろしながら、少し心配そうな顔をした。
「何かあったのか?」
「ううん。何も」
カツキは立ち上がった。見下ろされているのは、子供扱いされているみたいだ。
「何にもないわけないだろ!? お前が授業をフケるなんて異常事態なんだよ……!」
……また怒ってる。どうしてこう、キツイ言い方しかできないんだろう。
「なら、どうして僕が教室に居ないってわかったの? クラス、違うだろ?
自分だってフケてたから、わかったんだろ? 僕だって気が向くことだってあるよ」
「うるさいな、お前は。俺はお前と違うんだよ……!」
「そっちこそ何? どうしてここに来たの?」
「べ、別に……。偶然だよ。ブラブラしていただけだ……。
……おい。今日から、一緒に帰るからなっ」
追求された矛先をすり替えるみたいに、唐突にそう言い切った。
「本気で言ってるの? だって、かなり遅くなるよ?」
「いーんだよ。つべこべ言わずに感謝しろよ?」
……感謝……。感謝してほしいのはこっちの方だよ……。リツキのせいで、怖い目に合って、これからだってその可能性は高いのに。
「リツキ?」
「なんだよ」
返事をしながらも、問い掛けをうまく交わす為か、リツキはあらぬ方向を向いている。
「先週の、ショート・ボブの女の子。覚えてる? セーラー服の」
「…………」
だんまりだった。
「リツキがキスしてた子……」
ガッと振り向くと、リツキは口が裂けそうなほど大きな口を開けて言った。
「なんにもなかったって言ってるだろ!? 1時間くらい、横になってただけだよ!?
けど、全然お前と違う。やっぱり、眠れなくて…………」
急に気弱に口ごもり、リツキはもどかしく唇を噛み締めた。
「かわいい人だったね。……口は悪いけど。元気が良くて、自分の気持ちに素直な人だ」
微笑んで、カツキは言い返してみた。あからさまに、リツキは怯んだ。
それが意外でおかしくて、カツキはもっと言ってみた。
「リツキって、あーゆータイプが好みなの? 他の子も紹介してよ。
邪魔はしないようにするからさ」
頭をうなだれて、リツキは前髪をカシカシとかきあげた。そのままの格好で、ぼそりと言う。
「悪かったよ。お前に、とばっちりかけて……」
……知ってた……? なぜ? さっき、先輩たちに囲まれてたのを、どうして知っている?
リツキのことだから、近くに居て、僕がピンチなのを黙って見過ごすはずがない。
なら、誰かに聞いた? それは一体誰?
! ……トサキだ……。外崎毅雄。
「だけど。当分訳は言わないぜ。やめたりもしない。……女どもが言い寄ってくる限りな」
……。言い寄ってきた子たちみんなと、付き合う必要ってないと思うけど……。
「は。今度は俺の好みで選ぶから、数は減るはずだぜ。安心しろよ!」
……リツキぃ……? 恩着せがましく言うことってないだろ……?




