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鳴晟学園の春は、桜の花びらが吹き払われた後、
涼しげな緑と若草色に染め変えられる。
新入生の、緊張の続く日常を包み込むように。
広々とした校内だった。
半月前、入学した頃は、まるで動物園みたいだと思った。
……悪い意味ではなくて。カツキなりの印象だった。
様々な樹木と、それらを取り巻く芝生の空き地。細い小川も、ささやかな噴水もある。
体育館やグラウンドとは少し離れた4棟の校舎は、生い茂る緑に足元を包まれるようにして建っていた。それぞれの建物は二階の空中回廊で繋がれ、植物には好意的な設計だった。
この学舎を設計させた人は、自然が大好きな人だったのではないだろうか。
現在も、見事に維持されている情景は、今も、緑を愛している人が学園の中枢にいるから。
花々は、さほど好まれていないらしい。花壇は控え目なものだし、花の咲く樹木は木立の中に密やかに隠されている。桜の木だけは特別に、正門付近で長い列を作っていたけど。
点在する半円形のこんもりとした植え込みや、迷路じみた配置の生け垣の庭園。落葉樹の間などにも、縦横に散策できるよう細い小道が通っていた。
滑らかに舗装された小道を外れると、エスケープには絶好の芝の絨毯と日溜りが。
カツキは苦笑いした。双子の兄弟。リツキなら、いい隠れ場を見つけたと思うに決まってる。
リツキの姿が見えない時には、真っ先にこの辺りを探そう。
そう決めて、カツキは校舎に引き返した。




