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俺の人生2

2週間ぶりに母ちゃんが突然帰ってきた。まあこの女はいつだって気まぐれで突然だけどな。今日も酔っ払ってやがる。


『大輔!ただいまー!久しぶりだねー元気だった?雄輔も元気なの?』


『うるせーんだよ!酔っ払い!雄輔は寝てる!もっと静かに喋ろ!』


このクソ女は今何時だと思ってんだ。夜中だぞ。ガキは寝てるに決まってんだろ。そんなこともわからねーこのクソ女が俺の母親だなんてな。何が神は平等だよ。


『あんたさーあたし!いちおあんたの親だよ!最近生意気になったじゃん!ねえー大輔!お水ちょーだい!』


『お前が親らしい事をしてから親ぶれ!ほら!水!金は?食費ぐらい置いていけ!』


お前を親だと思った事はねーよ。お前は俺達を半分捨ててるようなもんじゃねーか。本当にバカな女だ。


『そうだねーあたし親なんか向いてないからねー!金はあるよ!いい客ついたんだー。今月は贅沢していいよー大輔!』


『あっそう。じゃあさっさと出せ!シラフになってやっぱりやめたなんて何度もあるからな!早く金渡せ!』


俺達に必要なのは金なんだよ。お前がどれほど帰ってこなくとも金さえくれれば俺達はなんとか生きていけるんだ。最悪の事態を犯す事なくな。


『はーい!五万あれば充分でしょ?あたしが頑張った金なんだからねーあんたが働くようになったらちゃんと利子つけて返してよー!』


『あー。生きていたらな』


1週間先ですら生きてるなんて確信がないんだ。大人になるなんて夢のまた夢の話しだ。それぐらい俺達は生きるか死ぬかの生活なんだよ。


『ねぇー大輔!お父さんほしい?』


『いやいらねーよ。お前だけ一緒に住めばいいだろ。ここの家賃や光熱費に食費さえちゃんと金だけくれりゃお前がどこに行こうが関係ない。どうせ俺らがいたら邪魔だろ。俺は雄輔の面倒を見る。だから金だけしっかり渡してくれればお前がどこの男と住もうが邪魔はしねーよ』


またか。お前は何度失敗しても懲りねーんだな。とことんバカか。どれほど捨てられればわかるんだ?そんなに男に頼ってなきゃ生きていけねーのか。お前に振り回されるのはごめんだ。金だけはちゃんと支払ってくれよ。


『えー!だってさー大輔と雄輔も一緒に住もうって言ってくれてんだよー!』


『どうせすぐ別れんだろ。また家探す方が大変だ。だからお前だけ行けよ。俺らは金さえくれれば生きていけんだよ!』


その金さえ途切れる時がしょっちゅうじゃねーか。だからお前も信用してねーんだよ。


『そう?じゃあしばらく帰ってこないよー。お金無くなったら連絡してきなよー』


『連絡した所で金をよこした試しがあまりないけどな。引き落とされる分だけは最低払えよ!住む家がなくなったらお前が捨てられても帰ってくる場所がねーんだぞ。困るのは俺らだけじゃなくお前も一緒だ!』


期待はしていないけどな。期待して裏切られる方がキツイ。だったら最初から期待も信用もしない方がいいに決まってる。


『わかったよー!ねえー大輔!あんたさー自分の父親も嫌いだったよね!まああいつは酒乱だったもんね。でもさーあんたガキのくせにやることヤバイよー!あたしまでやらないでよー!あーねむたーい。おやすみー』


黙れ。クソ女。俺はなんでこんな女から生まれたんだ。母親の自覚なんか一切ねーし。あーそろそろ雄輔の靴も調達してこねーとな。この五万が最後だと言う可能性もあるし無駄遣いはできねー。調達出来るものはなるべく手に入れて何かあった時の為に残しておかないとな。まあ1年もすりゃどうせ捨てられて帰ってくるんだろうけど。母ちゃんが男の元へ行き俺はまたあの公園に行った。最低でも千円は手に入る。俺も稼げる時に稼いでおかないとな。


『やあ!大輔くん!こんばんは。また会えたね』


『おっさん!前金だぜ』


俺は稼ぎに来てるんだ。おっさんの喋り相手になってやってるんだからな。


『あーそうだったね。はい。じゃあ千円。どうしたの?顔?殴られた跡?少し青いよ』


今日の君は少し元気がないね。エネルギーがちょっと弱ってきたかな?毎日フルに使っていたらそりゃあエネルギーも足りなくなるよ。君はちゃんと眠っているかい?毎日明日の事を考えてゆっくり眠れていないんじゃないのか?施設に行くと言う方法がある事も知っていてあえてそれでも子供だけで生活しながら母親を待つと言う事を選択して生きている君はやっぱりお母さんが好きだからだよ。君は否定するけどね。いつか君もわかる時がくるよ。生きる事がどんなに大変でもお母さんが帰ってくる場所を作っていてあげたいんだろ。11歳の君には本当は辛いはずだよ。大輔くん!それでも君はお母さんと弟を守ろうとする勇気ある強い子だね。でも時々充電して休みを入れなきゃいけないよ。君はちょっと疲れてきているようだね。


『ただの喧嘩だよ。んで今日は何を話すんだ?』


今日の俺は仕事に失敗した。でも逃げたけどな。その時警備のおっさんも逃げられまいと必死だったから揉み合ってる時におっさんの肘が顔に当たり俺が倒れ大袈裟に痛がってやったから怪我をさせてしまったと思ったおっさんがひるんだ隙に逃げ出してやった。だけど生きる為の貴重な店を一件失った。俺が調達できる店に行けなくなるのはかなりの痛手だ。新たな店を探し店内を把握し私服警備員を見つけ出しそいつの休憩時間まで調べあげて仕事をするのにかなりの日数を要するんだからな。


『そうだね。君は今日食事にありつけることが出来たの?美味しいパン屋さんがあってね。良かったら弟くんと朝ごはんにでも食べて。言っとくけど同情ではないよ。俺が食べたかったらついで。ほら?これは俺の朝食用。ここのお店のパンが美味しいんだよね。ちょっと遠回りしなきゃいけないからなかなか買いに寄らないで帰っちゃうんだけど。仕事に疲れてしまってね』


『あっそう。じゃあ貰ってやるよ。おっさんは結婚してないのか?でも俺ぐらいの子供がいるんだろ?離婚でもしたか?うちもそうだから別に驚かないぜ。うちの母ちゃんはもう3回は離婚してんじゃねーか』


本当に呆れるぐらいだ。自分の母親だと思うと恥ずかしい。


『そうなんだ。それで君は強く生きてるんだね。俺は結婚した事はないよ。ただ3年程子供の面倒を見てた。6歳までしか知らないからその後、彼がどう生きているか心配で毎日想っているよ。きっと寂しい思いをしているんだろうなと思ってはいるんだけど俺に出来る事なんかないからね。彼が強く生きてくれている事を願うばかりかな』


慶太郎!君は1人じゃないんだよ。近くに俺がいなくても俺は君を想っているんだからね。


『そんなに気になるんだったら俺と喋ってないで会いにいけばいいじゃん。別に何かをしてほしいとかじゃないんじゃねーの。ただ会うだけでいいと思うけど』


なんで会いに行かねーんだよ。おっさんにとって大切なガキなんだろ?毎日心配するぐらいなんだから。


『そうだね。ただ会う。それが出来ないんだよな。余計傷つけてしまいそうで俺の方がビビってるんだ。今日は星も見えないね』


慶太郎!どうした?君の寂しさを今日はより強く感じるよ。慶太郎!もっと上に上がってきてくれ。じゃないと俺の想いが君に届かないようだ。


『おっさんはその子を捨てたのか?』


なんでおっさんはそんなに哀しい顔すんだよ。


『捨てたか。そうだね。彼が辛い思いをするのをわかっていて結局何もしなかった俺は捨てたのと同じだね。今日はあいつが泣いてる気がするよ。どうしてだろう。何があったんだろうな』


『見るだけではダメなのかよ?遠くからでも見ればいいじゃん。そんなに気になるんだったらな。俺が付き合ってやってもいいぜ』


見るだけでもいいじゃねーか。おっさんは捨ててねーじゃん。そんなに想ってるんだからよ。俺からすればそいつが羨ましいぐらいだ。


『君は本当に優しくて男気のあるいい男になるんだろうな。俺にも君ぐらいの男気があればあいつを守ってやれたのにね』


慶太郎!泣くんじゃない。負けないで生きなさい。


『おっさんはいつ休みなの?つうか仕事はなに?』


『俺はいちお医者だけどまだ新米だよ。休みはあってないようなものかな。急に呼び出されるしね』


『ふーん。んでとりあえずいつが一応休みなんだよ?その一応休みっていつだ?』


そんなに心配なら姿を見に行けばいいだろ。


『土曜だけど。やることはいっぱいあるよ。まだまだ勉強しなきゃならない事だらけだからね』


『じゃあ土曜の13時。俺は弟に昼飯を食わして来るから。ちゃんと来いよ!おっさん!じゃあな!』


おっさんがそんなに心配するガキってどんなガキだ?そんなに想われて幸せじゃねーか。


『おい!ちょっと!大輔くん!』


強引な子だな。人生には時に思いきりも必要だと言う事かい。でもきっとあいつは塾だよ。大輔くん!会えると言うより姿を見る事すらないよ。君の気持ちだけはありがたく受け取るね。それより君も大丈夫なのかい?小学生からそんなに強がって生きていて。そんなに深く考える時間も君にはないのかな。悩む暇がないんだろ。張り詰めている時にはがむしゃらに頑張れるけどその糸がプツンと切れてしまった時が怖いんだよ。君はそれに耐えられるの?大輔くん。君はもうすでに死をいつでも覚悟して生きてきたから多少の事では怖じけづかないのかな。でも君に隠され潜んでいる弱さがとても心配だよ。君自身が気づいて認識していないと突然現れた時に君は対処するのにきっと不安でいっぱいになるからね。弱さを認めてやる事はとても大切だよ。そこからまた強くなれるんだ。君はどう11年間を生きてきたんだよ。大人が悪いね。俺も含めて君に何もしてやれないんだからな。

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