表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非情な天使(改稿編)  作者: ドラキュラ
復讐代行編
17/21

第六章:語り合おう

長靴の形をした島国---イギリスに私と飛天が着いたのは昼過ぎだった。


かつては“太陽が沈まない国”と言われフランスと何度も戦争を繰り返した。


第一次、第二次にも参加して常に戦勝国になるなど運は良い。


しかし、栄光と衰退は世の常だ。


今では欧州の一国として生きている。


かつて私が事務所を構えた国だが、どうしてだろう?


こんな国に事務所を構えたのか理解に苦しむ。


まぁ、もう事務所を構えたりしないけど。


彼と再会して改めて気付いた。


嗚呼、やはり私は彼が好きなんだ。


一時でも離れたくない。


離したくない。


自分の気持ちに嘘は吐かない。


私は彼が堪らなく好きなのよ。


身も心も・・・・魂でさえ差し上げる程に。


こんな狂気さえ孕んだ愛を世間では何と言うのかしら?


狂気の定、と言うかもしれないわね・・・・・・


でも、と思う。


果たして狂気を孕まない愛を、愛と呼べるの?


堕ち行く所にまで、堕ちてこそ愛と呼べる。


しかし、それは相手も同じ気持ちでないと駄目だ。


一方的な愛情では受け入れられる訳がない。


それは飛天が経験して“いる”から解かる。


今でもしつこく“ストーカー”している牝犬2匹が・・・・・・・・・・


「どうした?」


飛天が前を見ながら私に声を掛けてきた。


彼の服装は何時も通り黒一色。


喪服と思える衣服だが、黒という色は男も女も“栄える”色なのよ。


まぁ、他の色服を着ても飛天なら栄えるけど、黒だからこそ飛天は飛天なのよ。


それが彼のポリシーと言えるけど、逆にそれのせいで盛りのついた牝犬どもが煩い。


「どうした?」


もう一度、彼は私に訊いた。


「何でもないわ。マイ・ハニー」


本当ならダーリン、だけど敢えて私はハニー、と言い飛天の唇を奪った。


牝犬どもが嫉妬の眼差しを私に向ける。


良い気味だし、心地よいわ。


嫉妬は罪、というけど果たして世界で無欲を貫ける者が居るのかしら?


天使も罪に溺れる御時世に・・・・・・・・・


口づけをされた飛天だが、表情は変わらない。


それ所か怒っていた。


「・・・ふざけるな」


「ふざけてなんてないわ。ただ、誰が貴方に相応しい“女”なのか、周りに教えただけよ」


「・・・・・ふん」


彼は鼻で嗤うと、また歩き出した。


それを私は追い駆けた。


「所で、罪人の事だけど、良いかしら?」


タクシーを拾わず歩きで向かうから、私は話題を出した。


「どうした?」


飛天は相変わらず無表情の上に無愛想で、前を見て訊いてくる。


「そんな愛想ない顔しないでよ」


「俺の勝手だ」


「もう・・・あの女も傍に居るけど、一緒にやる?それとも別々にする?」


「・・・別々だ」


「そう。それじゃ、女をお願いね」


「・・・・何?」


飛天は左しかない金色の眼差しで私を見た。


「今回は私に譲って。大丈夫・・・貴方の獲物を横取りしないわ。ただ、語り合いたいのよ」


「・・・語り合う、か。お前の場合は口じゃなくて“鉛”だろ?」


「えぇ。でも、貴方だってそうでしょ?」


「いいや。俺は拳だ」


あらあら・・・・・・・・・・・


「ご愁傷様ね。でも、“それ位”が良いかもね」


それ位が女には良い。


それ以下でも以上でもない。


ちょうど良くて、依頼主の願いも叶う。


私は暗い笑みを浮かべて煙草---ジタンを銜えた。


それから歩き出す。


後もう少しで、着くわよ?


小便と大便は出し切った?


ママとパパにお別れのキスはした?


遺書と財産処分は終わったの?


神様に祈りは捧げた?


銃の手入れは終わった?


身体は綺麗にした?


こめかみを撃つから盛大に脳みそが飛び散るから、清掃屋に連絡しなさい。


それから・・・絶望して打ち震えなさい。


黒い悪魔と灰色の天使が貴方を、優しくも残酷に殺して上げるから・・・・・・・・・・・・・・・

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

教会に到着したのは夜も遅い深夜2時だった。


「・・・結界、か」


飛天は教会を見て舌打ちをした。


結界とは飛天たちのように、邪悪なる物を締め出す術の一種よ。


でも、力が強い悪魔や邪神なら何でもない。


雑魚なら指の皮一枚でも触れたら死ぬけど。


だけど、それは人間が張った結界限定。


神、天使、精霊などの結界は厄介で、高位の者でも手こずる。


それが彼の悪魔退治で有名なラファエルが張った、となれば・・・・・・・・面倒なのよね。


「やっぱり私がラファエルの相手をするわ」


どうせ、結界で身動きが取れない彼を、“お持ち帰り”する腹だったんでしょうね。


姑息すぎて厭きれるわ。


まぁ、そんな手も私が居るからには通用しない。


寧ろ逆・・・・・・・・・


護るべき存在の女が泣き喚いて死ぬ様を見せて上げる。


「・・・・・・・・・・・」


飛天は腰からモーゼルM712を取り出した。


固定ストックにもなるホルスターは無い。


まぁ、これのフルオートなんて当たらない、と最初から思っていた方が良いけど。


無言で撃鉄を起こして彼はドアに向かって引き金を引いた。


フルオートにしたのか・・・・弾は無数に飛び出てドアを蜂の巣にする。


モーゼルの弾数は10発。


もしくは20発の延長マガジンを付ける。


飛天のモーゼルは10発の通常マガジンなのに、弾は20発以上出ている・・・・・・・・


魔力で出来た弾丸---“魔弾”を撃っている。


通常の弾丸より全てにおいて高い。


反面で自分の魔力で製造している訳だから、ある意味では金食いならぬ“魔力食い”ね。


まぁ、飛天の事だから問題はない。


あっという間にドアは破壊された。


私と彼はドアを蹴って中に入る。


巨大な十字架が目の前にあり、その下では祈りを捧げる女が一人・・・・・・・・・・・・


「・・・お前か」


名前も訊かず飛天はモーゼルを向けた。


「来たわね。禍々しい者よ」


女は立ち上がり振り返る。


写真より少し太ったわね。


「禍々しいのは同じだ。自分の妹だけでなく、他の娘も殺したんだからな」


「殺した?私が?何を言っているの?私は誰も殺してないわ」


ただ、手伝いをしただけ・・・・・・・・・・・


「それだけで十分だ。殺すには、な」


「それは貴方たちよ。さぁ、天使様」


スッ・・・・・・・・・・・


音もなく暗闇から女---ラファエルが出てきた。


「飛天・・・・・ガブリエル・・・・・・」


「気安く名前を呼ぶな。反吐が出る」


飛天はラファエルを睨みつつ、女を逃さない。


私の願いを聞いてくれるのね。


「ラファエル。今回は私と話をしましょう」


鉛で、ね・・・・・・・・・・・


懐に手を入れてコルト・パイソンを取り出す。


「どうしたのですか?天使様。早く、この邪悪なる物・・・・・・・・・・・!?」


女は最後まで言う前に十字架に押し付けられた。


「さぁ・・・泣き叫べ」


飛天が口端を上げて笑った。


「飛天!!」


ラファエルが止めようとするも、私が阻止した。


場所を外に移動させた。


「私と話し合いよ」


教会に結界を張った。


ラファエルの結界から重ねるようにして、私が張ったから当然のことだけど私の方に主導権はある。


「・・・ガブリエル」


先ほどまでの顔が一変して、憎悪に満ちた顔を私に向ける。


「久し振りに会った旧友に対して失礼ね」


「貴方に言われたくないわ。それより早く結界を解いて」


「嫌よ。あの女には罪を償ってもらうの」


「もう現世で罪は償われたわ」


「あれで?冗談。それに根本的な事を忘れているわ」



ラファエルは首を傾げる。


それを見ながら私はパイソンを向けた。


「殺された者の“怨み”は済まないのよ」


「・・・・・・・」


言葉を失うラファエルだが、すぐに気を引き締めて臨戦態勢を取った。


さぁ・・・・始めましょう。


鉛の語り合いを・・・・・・・・・・・・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ