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ツヨイチカラ  作者: 桃馬 穂
第11章 禁じ手の握手

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第11.3.2量子パルス:三つ巴の激突/パート2:三つ巴の戦場

≡ Quantum Pulse 11.3.2 / The Three-Way Clash - Part 2: The Battlefield of Three Wills


 戦端が開かれてから、わずか三十秒。だがその短い時間の中で、海底はすでに修羅場と化していた。

 光の槍が三方から交差し、遺跡の巨大柱が弾け飛ぶ。超古代アトランティスの建材すらも耐えきれぬほどのエネルギーが、時空バリア中枢を包む戦場に解き放たれていた。海水が瞬間的に沸騰し、無数の泡と衝撃波が生まれる。音のない地獄。だが、その沈黙こそが、凄絶な戦いの苛烈さを物語っていた。

 エデン・プロジェクトの多連装レーザーキャノンが、ドームの内側から水の闇を切り裂いて発射される。細く、鋭い光条が一直線に走り、A8野村派の重装甲歩兵部隊を次々に切り裂いていく。その威力は凄まじく、装甲ごと兵士を焼き尽くす。瞬時に灰すら残さないその光は、まるで神の裁きのようだった。

 しかし、野村派も黙ってはやられない。彼らはその一撃を予測していたかのように、タイミングを計り、複数の砲撃拠点を海底に展開。大型機動兵器「ランサー・キャリア」から重火器が一斉に放たれ、エデンのシールドドームに雨のように降り注ぐ。上空には、スカイガン——多砲塔型の浮遊式砲塔群が展開され、エデンの上層部を削り取るように砲火を加え続けていた。

「やっぱり……スカイガンまで持ち出してきたか」

 翔太が奥歯を噛み締めながら呟いた。

 「やる気じゃなく、盗る気満々って顔してるよな……」

『エデンと野村派をぶつけろ。我々は漁夫の利を得る』

 クロノスの声が、爆発の振動すら届かない冷気のように、通信網を通して全軍に響いた。その声に感情はない。ただひたすらに「効率」と「必然」のみを追求する計算機のごとき判断。だが、そこに宿る意志は明確だった——理念を裏切った者たちへの、鉄槌。

「カナデ、各隊の損耗は!」

 翔太が通信チャンネルを切り替え、即座に確認を取る。

『今のところ軽微。ただ……』

 カナデの声は、少しだけ躊躇を含んでいた。

 『テンプラーの動きが……正確すぎる。まるで、こうなることを読んでいたみたいに……』

 翔太は視線を泳がせる。確かに、クロノス率いるテンプラーの隊列は、まるで開戦前からすべてを知っていたかのような動きだった。撃たれる前に回避し、敵が移動する前に先手を打つ。そこにあるのは、軍人の「感覚」ではなく、予測アルゴリズムに基づいた「反射」のようだった。

(この人……どこまで、読んでる?)

 翔太の心に、ぞわりとした戦慄が走る。クロノスという存在は、ただの理論家でも戦術家でもない。彼は「歴史そのものを設計図として再構成できる」と本気で信じ、そして実行している。理念に殉じる狂気。それを知る者として、翔太は今、最も危険な味方と共にあることを実感していた。

 戦場は刻一刻と姿を変える。

 エデンのシールドドームは、野村派の集中砲火を辛うじて受け止めていた。その透明な壁面には、無数の火花と波紋が走り、シールドのエネルギーが限界に近づいていることを示していた。

 しかし、エデン側も黙ってはいない。中枢直下から、轟音とともに巨大な影が立ち上がった。古代ガーディアン・ゴーレム。それは、人間の十倍以上もある巨体を持つ、人智を超えた自律戦闘ユニット。超古代文明の遺産とされるそれが、今、再び眠りから目覚めた。

 「来たか……!」

 郷田が通信越しに呻いた。

 「どう見ても“神話級”じゃねぇかよ……!」

 ガーディアン・ゴーレムの腕部から発射された重力投射砲が、野村派の重装甲兵を一撃で吹き飛ばす。装甲が剥がれ、圧力で内部から潰されるようにして爆散する兵士たち。その描写はあまりにも非人道的で、翔太の胸がわずかに軋んだ。

(これが……本当に、“守る側”の兵器なのか?)

 だが、止まるわけにはいかない。ミカの遺した「0.3秒の死角」。そこを突かねば、この戦争に未来はない。

『突入チーム、接近開始。……翔太、あなたたちの番よ』

 カナデの声が、深海の緊張を貫いて届いた。

「ああ、行くぞ。……みんな、ついてきてくれ」

 翔太はボードのブーストを最大にし、海底を蹴って跳躍した。爆発の波と波の狭間を縫い、光の交錯する戦場の中心へと躍り出る。

 しかし、その瞬間だった。

 A8野村派の部隊の一団から、一体の人影が水を裂いて飛び出した。スーツ姿。だが、その動きは明らかに人間ではない。腕のスイング、回転速度、着地角度——すべてが、物理法則を正確に「計算」した上で成り立っていた。

 『来た……Unit07……! 遺構内部に突入してきた……!』

 カナデの声が震えた。その名を聞いた瞬間、翔太の背中に冷たい電流が走る。

 “あの”アンドロイドが——進化して戻ってきた。

 赤い光を宿したその目が、翔太を正確に捉えた。次の瞬間、両腕の高周波振動ナイフが展開され、切子細工のように鋭く光を跳ね返す。

(これは……前と違う……!)

 翔太の本能が警鐘を鳴らしていた。かつて、EMPで停止させた脅威。だが、今のその姿には、まったく迷いがない。ただ静かに、論理に従い、目標を“排除”する。それだけを目的とした殺戮機械が、深海の闇に降り立った。


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