第0.1.7量子パルス:時を越える振動
≡ Quantum Pulse 0.1.7 / Vibration Across Time
「見たか、翔太君!」
毒蝮博士の白衣が静電気のようにぱちりと揺れた。彼の手元には、例の「Φシフター」の端末があり、あたかも心臓の鼓動のような不規則な点滅を繰り返していた。
「この波形……常軌を逸している。少なくとも、わたしたちの世界のどんな既知の現象とも一致しない」
博士は興奮気味に研究台を指で叩いた。モニターに映る波形は、まるで呼吸するようにゆらぎながら、じわじわと振幅を増していた。翔太は黙って、そばで見守っていた。
正直なところ、何が起きているのか分からなかった。だが、博士の目の奥に宿る、あの光。まるで子どもが秘密の遊び場を見つけたような、純粋な輝きが、翔太の心を微かに動かしていた。
「“あちら側”と接続が始まったのかもしれん……」
独り言のようにつぶやいた博士は、次の瞬間、急にこちらを振り返った。
「いいか翔太君、この装置は単なる観測器じゃない。境界を揺らす。“こちら”と“あちら”の振動を、共鳴させる可能性がある」
装置の奥から、かすかに耳鳴りのような音が鳴っていた。それは機械音とも風のうねりともつかない、抽象的なざわめきだった。翔太にはそれが、目に見えない“どこか”から届いた声のように思えた。
博士は、眼鏡の奥で何かを確信したかのように微笑んだ。
「君はまだ知らない。でも……この先、きっと分かるさ」
その日、Φシフターは微かに“振動”を記録した。誰も気づかぬほど微細な揺れ――だが、それは確かに、境界の向こうから届いた小さなノックだった。




