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第0.1.6量子パルス:曖昧なざわめき
≡ Quantum Pulse 0.1.6 / Indistinct Murmur
天野翔太は、その夜、机に向かったままペンの動きを止めていた。教科書は開かれたままで、ページの端が扇風機の風に揺れている。窓の外では、風鈴がかすかに鳴っていた。
何かがおかしい、と彼は思った。だが、それが何なのかは言葉にできなかった。昼間のラジオで流れた、遠く離れた大陸での重力波の異常観測。
ドク博士の、「この世界にもそろそろ“境目”が現れるかもしれん」という、冗談のような言葉。そして、自分の中でふと芽生えた、よくわからない焦燥感。すべては断片的で、繋がりを持たないように見えた。
ただ、まるでどこか遠い場所から、見えない手が糸を引いているような気配だけが、彼の内面にまとわりついて離れなかった。
「ああ、まただ……」
翔太はペンを置いて立ち上がり、窓のカーテンを開いた。暗い夜空。月は半分ほど欠けていた。
何かが、始まろうとしている――その確信だけが、理由もなく胸に残った。理由は、ない。だが、どこかが、ひどく静かすぎるのだ。




