第3.2.1量子パルス:翔太の葛藤と成長への行動
≡ Quantum Pulse 3.2 / The Step Toward Change
理科準備室の片付けを終えて、モップを元の場所に戻したとき、翔太はふと窓の外に目をやった。西日が校庭を朱色に染め、野球部の掛け声が風に乗って届く。近くある学園祭の準備も生徒たちの慌ただしくも活気のある声が遠くで響いている。一方で翔太は昨日の夜の博士の研究室での話が、まだ頭の奥でぐるぐるしていた。
「……なあ、結衣」
ビーカーを拭いていた結衣が振り返る。「ん?」
「俺さ、最近ちょっと……変わらなきゃなって思ってんだ」
「急にどうしたの? 昨日の博士の話の影響?」
「まあ……そうかもしれない。ていうか、色々あってさ」
「色々って?」
翔太は言い淀んだ。影山の名前を出すのは気が引けるが、結衣が誰を特別に見ているかは、もう分かっている。それでも——だからこそ——引き下がるのは嫌だった。
「俺さ、今まで部活も勉強も、なんとなくやってたけど……これからはちゃんとやろうと思って」
「えっ、翔太が? あの“宿題はテストの朝にやる派”の翔太が?」
「それ、もう封印する」
結衣は口元を押さえて笑った。「じゃあ、影山くんみたいになるってこと?
「いや、あいつにはならない。でも、あいつに負けないくらいにはなりたい」
「ふーん……いいじゃん。応援するよ」
何気ないやり取りだったが、翔太の胸の奥では、何か小さな歯車が回り出していた。ライラが持ち込む変な出来事も、博士の奇行も、今までは受け身だった。でもこれからは、少しでも前に出て関わっていこう——そんな決意が、ぼんやりと形になりつつあった。
結衣は棚を拭き終え、雑巾を絞る。「でも翔太ってさ、やる気を出すときは出すけど、長続きしないからね」
「ひどいな。今回は違うって」
「はいはい、期待してるよ、で、学園祭も頑張ってね!」
その笑顔に少し救われながら、翔太は心の中でひとり誓った。——必ず変わる。結衣の隣に、胸を張って立てる自分になるために。




