第2.1.5量子パルス:遠い目の気配
≡ Quantum Pulse 2.1.5 / The Shadow in Her Eyes
学園の昼休み。騒がしさの余韻がまだ教室に残っている。翔太は窓際の席で弁当を広げながら、ふと斜め後ろのライラを見る。
彼女は今日も明るく振る舞っていたはずなのに、今は静かに、校庭の隅をじっと見つめていた。いつもの奔放な言動はどこかへ消え、少女の横顔には、遠く見知らぬ景色を懐かしむような、そんな翳りが宿っていた。
「ライラ、どうかした?」
翔太の問いかけに、ライラはすぐに笑顔を取り戻した。
「ううん、なんでもないよ。ちょっと、おなかいっぱいで……」
その笑みは確かに無邪気だったが、どこか取り繕っているようにも見えた。翔太はそれ以上追及せず、箸を動かす。だが、胸の奥にひっかかるものが残った。
数日後、放課後の帰り道。夕焼けに照らされた坂道を三人で歩いていると、ライラがぽつりと口を開いた。
「ねえ、もし……とても遠くの世界で、すごく大事なものが壊れかけてたら、どうする?」
唐突な問いだった。結衣が少し驚いたように立ち止まり、翔太も思わず歩を止めた。
「大事なものって?」
「たとえば――世界そのもの、とか」
冗談めかして笑うライラに、二人は言葉を失った。その笑い方に、いつもの奔放さはなかった。代わりに、帰れない場所を思うような、静かな孤独がにじんでいた。
「……夢でも見たの?」翔太が無理に明るく言うと、ライラは肩をすくめた。
「うん、たぶん夢。でも、忘れちゃいけない夢、なのかも」
三人の影が、ゆっくりと長く伸びていった。




