2/18
第0.1.2量子パルス:ラジオからの予兆
≡ Quantum Pulse 0.1.2 / Anomalous Broadcast
「……本日未明、観測衛星コルヌ・アルマが、わたしたちの世界の外より周期的な重力波パターンを検出……」
どこか遠くで、人の声がする。翔太は手を止めて、顔を上げた。いつのまにか、隣室に置きっぱなしの父の古い短波ラジオがスイッチだけ入っていたらしい。
電池の消耗でかすれた声が、布団の山越しにかすかに届く。
「……時空の歪みか、未知の星間活動か。現在、天文台と国際機関が合同で……」
翔太は思わず笑った。重力波だとか、星間通信だとか。そんなものが、今の自分にどう関係するというのか。
数式もろくに解けない高校生にとっては、それは天気の話と大して変わらなかった。それでも――不思議なざわつきが、胸の奥で揺れていた。言葉にはできない。
が、何かが始まる。そんな感覚が、空気の裏に潜んでいる。翔太は、ラジオのスイッチを切った。
再び部屋に、静けさが戻った。鉛筆を取ろうとした手は、何も掴まずに机の上をすべった。窓の外で、風が鳴った。
いつもより、少しだけ深い音だった。




