第1.7量子パルス:奇声の証明
≡ Quantum Pulse 1.7 / Cry of Proof
静まり返った研究室に、ふと、空気を震わせるような高笑いが走った。それはまるで、この世界の空間に生じた小さな穴に、誰かが火を吹きかけたような――奇妙で、ひどく鮮やかな音だった。
「見たか翔太君!ついに、ついに来たぞ……これはもう、間違いようがない!」
ドク博士が、散乱した書類の束を踏み越えて、装置の前に駆け寄った。そこには、未だ意識を取り戻さない少女が、仰向けに横たわっている。彼女の服装は、この町のどの制服とも違い、織り目の規則も、色合いの階調も、見慣れぬものであった。
「わたしの、理論は正しかった……この装置は門を開いたのだ。ゲートだ、翔太君!いわゆる“裂け目”だ!あの子は、そこから現れたんだ!」
翔太は、ひとつ息を呑んだ。博士の背中越しに見える少女は、どこか儚げで、だが不思議に存在感を放っていた。さっきまで閃光を放っていたΦシフターは、今や静まり返り、その中心には、微細に揺れる空間の“しわ”のようなものが残っていた。
「これは――異世界からの来訪者だ。パラレル・ワールドだよ。夢でも幻でもない、我々の隣に並んでいた世界。その世界から、この子はやってきたんだ!」
ドクの声は、興奮の波に押し上げられ、まるでどこかの劇場の舞台上で台詞を吐く俳優のように響いていた。翔太は、なんと応じてよいかわからなかった。目の前の少女は確かに見慣れぬ姿をしている。
けれど、それが“異世界”と呼べるものなのか、あるいは――。
「君も、感じただろう。空気が引き裂かれるような音、重力のわずかな反転感覚。あれは偶然じゃない。私は、今、物理法則の壁を越えたんだ」
博士は、そう言って、白衣の裾を翻した。満面の笑みで、どこか涙ぐんでいるようにも見える。その笑顔が、翔太には少しだけ、怖かった。




