第1.4.1量子パルス:博士の叫びと“異世界”仮説
≡ Quantum Pulse 1.4.1 / Proclamation of the Otherworld
研究所の空気が、ひとつ息を呑んだかのように沈黙した。青白く輝く装置の中心から飛び出した少女は、床に倒れ込んでいた。全身から力が抜け、まるで眠っているかのようなその様子に、翔太はただ茫然と立ち尽くす。
「やった……やったぞ、これはまさしく……!」
ドク博士が突如として絶叫した。白衣を翻しながら、装置の前に駆け寄る。計器の波形が跳ね上がり、文字列がめまぐるしく更新されていく。
ドクの目はそれらを追いながら、まるで長年探し続けていた宝を目の前にした少年のように、興奮で輝いていた。
「見たか翔太君!これが証拠だ!理論は正しかったんだ!並行次元への接続は、現実だったのだ!」
ドクの声は、研究所の隅々にまで響いた。彼の手には古びたノートがあり、そこにはびっしりと書き込まれた数式と概念図。ページをめくるたびに、ドクの顔はさらに熱を帯びていった。
「装置が作り出したのは、時空のねじれじゃない。“隣の世界”――我々の現実とは微細に異なる、もう一つのレイヤー。それが今、接続されたんだ!」
翔太は、少女の傍にひざをつき、その顔を覗き込んだ。肌は驚くほど白く、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。長い睫毛の奥で、微かにまぶたが震えた。
「でも、本当に……異世界から来たのか?」
思わずこぼれた翔太の疑問を、ドクは振り返って笑い飛ばした。
「科学は仮説だ。だがな、翔太君。仮説がこうして、目の前に現実として現れたなら、それはもう真実だろう!」
その瞬間、研究所の壁のスピーカーから、重低音のような“共鳴音”が再び響き始めた。まるで異界の残響が、まだここに尾を引いているようだった。翔太の胸の内で、得体の知れないざわめきが広がる。
それは少女の出現による驚愕だけではなく、自分の知っている世界が、音もなく軋みはじめていることへの、言い知れぬ不安だった。




