表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツヨイチカラ  作者: 桃馬 穂
第一章 裂けゆく日常の向こうに

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/33

第1.4.1量子パルス:博士の叫びと“異世界”仮説

 ≡ Quantum Pulse 1.4.1 / Proclamation of the Otherworld

 研究所の空気が、ひとつ息を呑んだかのように沈黙した。青白く輝く装置の中心から飛び出した少女は、床に倒れ込んでいた。全身から力が抜け、まるで眠っているかのようなその様子に、翔太はただ茫然と立ち尽くす。

「やった……やったぞ、これはまさしく……!」

 ドク博士が突如として絶叫した。白衣を翻しながら、装置の前に駆け寄る。計器の波形が跳ね上がり、文字列がめまぐるしく更新されていく。

 ドクの目はそれらを追いながら、まるで長年探し続けていた宝を目の前にした少年のように、興奮で輝いていた。

「見たか翔太君!これが証拠だ!理論は正しかったんだ!並行次元への接続は、現実だったのだ!」

 ドクの声は、研究所の隅々にまで響いた。彼の手には古びたノートがあり、そこにはびっしりと書き込まれた数式と概念図。ページをめくるたびに、ドクの顔はさらに熱を帯びていった。

「装置が作り出したのは、時空のねじれじゃない。“隣の世界”――我々の現実とは微細に異なる、もう一つのレイヤー。それが今、接続されたんだ!」

 翔太は、少女の傍にひざをつき、その顔を覗き込んだ。肌は驚くほど白く、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。長い睫毛の奥で、微かにまぶたが震えた。

「でも、本当に……異世界から来たのか?」

 思わずこぼれた翔太の疑問を、ドクは振り返って笑い飛ばした。

「科学は仮説だ。だがな、翔太君。仮説がこうして、目の前に現実として現れたなら、それはもう真実だろう!」

 その瞬間、研究所の壁のスピーカーから、重低音のような“共鳴音”が再び響き始めた。まるで異界の残響が、まだここに尾を引いているようだった。翔太の胸の内で、得体の知れないざわめきが広がる。

 それは少女の出現による驚愕だけではなく、自分の知っている世界が、音もなく軋みはじめていることへの、言い知れぬ不安だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ