届かぬ言葉
人の声が、重なっている。
切れ目はない。
だが、うるさくもない。
誰かの言葉の上に、別の言葉が乗る。
意味が終わる前に、次の音が来る。
ここでは、それが普通だ。
ここは、いつもの場所だ。
通り道。
作業の途中で、人が自然と集まるところ。
集まる、と言っても、誰かが呼ぶわけじゃない。
止まる理由が、そこにあるだけだ。
俺は、荷を持っている。
特別な用じゃない。
頼まれたものを、運んでいるだけだ。
肩にかかる重さも、いつも通り。
重すぎない。
軽くもない。
足元は、踏み慣れている。
石の配置も、変わっていない。
欠けた角。
少し高い縁。
ここに来る理由を、改めて考える必要はない。
声が、横から流れる。
「それ、先でいいか?」
「いい。後で回す」
言葉は、短い。
説明は、つかない。
だが、意味は通る。
別の方で、木が擦れる音。
籠が、地面に置かれる音。
少し遅れて、誰かの笑い声。
俺は、その中にいる。
端でも、真ん中でもない。
邪魔にならない位置だ。
立っているだけで、視線からは外れている。
だが、離れてはいない。
人々を、警告せよ。
言葉は、形を取らない。
声にも、ならない。
ただ、浮かぶ。
浮かんで、消えない。
胸の奥に、引っかかっているわけでもない。
押してくる感じも、ない。
ただ、そこに、ある。
だが――
今すぐ、口に出す理由も、ない。
誰も、こちらを見ていない。
呼ばれてもいない。
立ち止まる流れでもない。
人の視線は、それぞれ別の方向に向いている。
手元。
籠。
地面。
俺は、荷を下ろす。
音は、他と混ざる。
特別には、聞こえない。
置いた、という感触だけが残る。
それ以上は、何も起きない。
周りを、見る。
顔ぶれは、知っている。
声も、区別がつく。
誰が、どの調子で話すか。
どの声が、冗談で、どれが、確認か。
誰かが、手を止める。
ほんの一瞬。
だが、別の誰かが、すぐに話し始める。
そのあいだに、小さな空白ができる。
——まだだ。
考えたわけじゃない。
選んだわけでもない。
ただ、流れが、続いている。
人々を、警告せよ。
言葉は、待っている。
急がない。
押してもこない。
命令なのに、促しではない。
俺は、そこに立ったまま、次の動きを探す。
視線ではなく、場のほうを。
誰かが、こちらに近づく。
荷の話だ。
作業の順番だ。
「ノア、それ頼める?」
「ああ」
返事は、自然に出る。
声も、いつも通りだ。
声色を、変える必要はない。
理由も、いらない。
動きながら、周りの音が、少しだけ整理される。
重なっていた声が、一つずつ、元に戻る。
話が終わる。
笑いが、落ち着く。
ほんの短い、何も言われない時間。
人々を、警告せよ。
言葉は、そこにある。
だが、まだ、置かれたままだ。
俺は、視線を上げない。
呼吸も、変えない。
待っているわけじゃない。
だが――
流れが、切れるのを、感じている。
次は、言葉の番だ。
……ただし、まだ、ここではない。
俺は、動かない。
場所を、越えない。
いつもの場所は、いつものままだ。
人の流れも、音の重なりも、変わらない。
その中で、俺だけが、次に進む準備を、している。
まだ、言わない。
……そう思っていた。
人の声が、少し途切れる。
完全に、止まるわけじゃない。
籠が置かれ、手が、離れる。
誰かが、短く息をつく。
作業の流れが、ほんの一拍、ゆるむ。
その間に、言葉が、前に出る。
出そうとして、出したわけじゃない。
待っていた、という感じでもない。
ただ、そこに、来た。
声は、上げない。
身体の向きも、変えない。
「……言われたことがある」
自分の声だと、分かる。
だが、少し遠い。
近くにいた二人が、手を止める。
止めきらない。
完全には、切らない。
顔だけが、こちらに向く。
俺は、続ける。
同じ調子で。
「……伝えろと」
言葉は、短い。
余分なところが、ない。
誰かが、瞬きをする。
もう一人が、眉を、わずかに上げる。
その反応を、見ようとはしない。
間が、できる。
短い。
だが、確かに、そこにある。
「……このままじゃ、よくない」
少しだけ、言葉を足す。
「……人々に、何か、知らせなきゃいけないみたいだ」
それだけだ。
言い切るでもない。
強めるでもない。
説明もしない。
続きも、置かない。
声は、作業の音に埋もれかけて、残る。
完全には、消えない。
だが、広がりもしない。
「……え?」
返事は、確認に近い。
問い詰める調子じゃない。
聞き返した。
それだけだ。
俺は、何も足さない。
視線も、上げない。
「言われた、って?」
もう一人が、半歩、寄る。
距離は、ほとんど変わらない。
近づいた、というより、位置を、確かめただけだ。
「……ああ」
それ以上、続けない。
言葉は、もう出した。
繰り返す理由は、ない。
空気が、揺れる。
風じゃない。
人の気配が、一瞬だけ、重なる。
重なって、そのまま、落ち着く。
誰かが、鼻で短く息を出す。
笑いかける前の、癖だ。
「ノア……」
名前だけが、呼ばれる。
続きは、出ない。
俺は、立ったままだ。
姿勢は、変えない。
手も、動かさない。
引き留めもしない。
言葉は、出した。
出し切った。
あとは、受け取られるかどうかだ。
それは、俺が、決めることじゃない。
作業の音が、戻る。
完全ではない。
だが、止まっても、いない。
籠が、また動く。
木が、擦れる。
誰かが、別の話を始める。
俺は、もう一度、息をする。
深くは、しない。
言うべきことは、言った。
それ以上は、今は、ない。
音が、止まりきらない。
だが、揃いもしない。
籠を持っていた手が、止まる。
完全には、下ろされない。
途中の高さで、残る。
置くか。
――まだか。
誰かが、瞬きをする。
もう一人が、鼻から、短く息を出す。
それだけだ。
誰も、声を荒げない。
誰も、離れない。
世界は、続いている。
ただ、少しだけ、噛み合いがずれる。
俺は、待つ。
次の言葉を、探さない。
言い直しもしない。
補足もしない。
もう、出した。
今は、それがどうなっているかを、感じている。
胸の前にある感じは、しない。
押し返されても、いない。
背中に回ったわけでもない。
ただ、空気の中に、そのまま、置かれている。
——これで、終わりか?
問いというほどじゃない。
考えたわけでもない。
浮かんだ。
それだけだ。
返ってくるものを、まだ、決めていない。
期待も、していない。
音が、戻る。
木が、擦れる。
布が、引かれる。
誰かが、足を踏み替える。
話し声が、ひとつ。
続いて、もうひとつ。
さっきと、同じ調子だ。
声の高さも、変わらない。
俺の周りだけが、少し、軽くなっている。
重さが、消えたわけじゃない。
なくなったわけでもない。
ただ、覆っていたものが、ない。
晒されている、という感じだ。
力を入れたわけでもない。
構えたわけでもない。
それでも、今の俺は、何かを持ったまま、立っている。
誰も、指を差さない。
誰も、距離を取らない。
それが、少し遅れて、効いてくる。
拒まれていない。
だが、受け取られても、いない。
宙に置かれたままの言葉と、そこに立っている自分。
どちらも、今は、動かない。
もう一度、息をする。
今度も、深くは、しない。
胸に残っているのは、達成感でも、後悔でもない。
――手応えが、ない。
待つしか、ない。
「……ノア?」
名前が、軽く呼ばれる。
近い距離だ。
振り向く必要は、ない。
声の位置だけで、誰か分かる。
「どうした?」
問い方は、いつも通りだ。
責める調子でもない。
“どうした”と聞かれて、答えが、すぐには浮かばない。
いや、浮かばないわけじゃない。
――言った。
それだけだ。
俺は、答えない。
答える必要は、もうない。
誰かが、鼻で短く笑う。
「はは……」
すぐ、止まる。
笑い切るほどでも、なかったらしい。
その間に、場の空気が、少し戻る。
「疲れてるだけだろ」
言った本人は、籠を直している。
こちらを、見てもいない。
――そう言ってもらえるのは、楽だ。
説明しなくていい。
訂正もしなくていい。
「最近、真面目すぎるんだよ」
別の声。
肩をすくめる仕草が、視界に入る。
真面目。
悪い意味じゃない。
だが、理由にはならない言葉だ。
「前から、そうだろ」
横から、軽く被せる声。
擁護でも、否定でもない。
「まあな」
誰かが、半分笑う。
空気が、少し緩む。
緩んだ分だけ、俺の中の張りも、ほどける。
――言葉は、受け取られていない。
だが、拒まれても、いない。
「また、考えすぎじゃないか?」
首を、わずかに傾ける。
本気で心配しているのか、ただの癖なのかは、分からない。
考えすぎ。
それも、便利な言葉だ。
否定でも、理解でもない。
場を、整えるための言葉。
「……」
俺は、何も言わない。
「ほら、最近忙しかったんだろ」
「そうそう」
「休めって」
次々に、言葉が重なる。
向きは、同じだ。
“理由”が、用意されていく。
俺の代わりに。
説明は、要らない。
理由も、聞かれない。
それで、話は、片付く。
「変な夢でも見たんじゃないか?」
誰かが言って、自分で、首を振る。
「いや、ノアがそんなこと言う奴じゃない」
半笑いだ。
否定というより、調整だ。
“いつものノア”に、戻すための。
「まあ、今日は早く切り上げろよ」
それで、話は終わったらしい。
誰も、距離を取らない。
誰も、声を荒げない。
――守られている、とも言える。
「で、これどこ置く?」
話題が、すぐ切り替わる。
「端でいい」
「了解」
作業が、動き出す。
音が、戻る。
布が、引かれる。
木が、擦れる。
世界が、自分の位置を、思い出したみたいに。
「ノア」
もう一度、呼ばれる。
今度は、少し低い声。
「無理すんな」
それだけだ。
俺は、頷く。
小さく。
「……ああ」
それで、十分だった。
言葉は、もう、誰の手にもない。
拾われてもいない。
投げ返されても、いない。
ただ、場に、残っている。
俺だけが、それを拾えずに立っている。
拒まれたわけじゃない。
受け取られなかっただけだ。
その違いが、ゆっくりと、胸に落ちてくる。
作業の音が、完全に、元に戻る。
世界は、何事もなかったように、進んでいる。
俺も、その中に、立っている。
——ただ、さっきより、少しだけ、裸だ。
その感触が、少し遅れて、言葉になる。
宙に置かれたままの言葉は、その場で消えたわけじゃない。
ただ、別の形として、扱われていた。
忙しさ。
年齢。
疲れ。
どれも、誰かを困らせない理由だ。
俺の顔を見ないまま、作業を続けながら、理由だけが、場に置かれていく。
笑いも、混じる。
短く。
軽く。
場は、きれいに整えられる。
――ああ、そうか。
そこで、はっきり分かる。
聞こえなかったわけじゃない。
聞き取れなかったわけでもない。
彼らは、俺の言葉を受け取った。
ただし、そのままでは、受け取らなかった。
別の意味に、置き換えた。
扱いやすい形に、直した。
それは、拒絶じゃない。
排除でもない。
むしろ、日常を守るための動きだ。
俺の中で、言葉が一つ、形になりかける。
――違う。
それは、理由じゃない。
説明でもない。
今なら、まだ言える。
補足できる。
訂正できる。
誤解だと、言うこともできる。
胸の奥で、息が、少しだけ前に出る。
声になる前の動きだ。
だが――
そこで、止まる。
止めたのは、恐れじゃない。
諦めでもない。
分かってしまったからだ。
ここで訂正すれば、話し合いになる。
理由を出して、理由が返ってきて、正しさを並べることになる。
そうなったら、無理しなくていい。
もう、それ以上、言われたことじゃない。
伝えろ、と言われた。
説明しろ、と言われたわけじゃない。
納得させろ、とも。
勝て、とも。
もう一度、息を吐く。
深くは、しない。
訂正しない、というほうが、今の自分には、一番、動かない位置だと分かる。
言葉は、もう、俺の手を離れている。
拾い直すことは、できる。
だが、今は、しない。
繰り返すことは、許されている。
だが、争う段階じゃない。
それだけが、静かに、残る。
作業の音が、完全に戻る。
布が擦れ、木が鳴り、水が流れる。
世界は、元の速さで進み始める。
俺も、その中に、立っている。
ただ一つ、言葉を、引き戻さなかったという事実だけを、胸の奥に残したまま。
「で、これどうする?」
少し離れたところから、声が飛ぶ。
もう、さっきの話題じゃない。
問いかけは、確認だけだ。
意味を探る余地は、ない。
「そっち運んで」
「はいよ」
短いやり取り。
目的だけが、行き交う。
俺は、差し出された籠を受け取る。
中身を見なくても、重さで分かる。
少し、片寄っている。
底に手を回し、持ち替える。
いつもの動きだ。
考える前に、身体が先にやる。
「ノア、そっちは後でいい」
声は、自然だ。
指示というより、順番の確認。
「分かった」
理由は、聞かない。
聞く必要が、ない。
木が、地面に置かれる音。
縄が、引かれる音。
誰かが、軽く咳払いをする。
音が、途切れない。
重ならないわけでもない。
「昼、どうする?」
前より、少し軽い声。
決まり文句みたいなものだ。
「まだ、決めてない」
短く答える。
さっきと、同じ調子で。
「だよな」
笑いが、ひとつ混じる。
否定でも、肯定でもない。
向こうで、布が広げられる。
「それ、日が当たるな」
「じゃあ、こっちに寄せるか」
布が引き直される音。
何事もなかったみたいに。
「ノア、これ頼める?」
「……ああ」
返事をして、動く。
距離は、近い。
呼び方も、変わらない。
声の高さも、同じだ。
誰も、こちらを気にしていない。
気にしていないというより、
もう、戻っている。
「終わったら、それまとめといて」
積み上げた籠を、顎で示される。
「了解」
やり取りは、滑らかだ。
引っかかりが、ない。
少し向こうで、笑い声。
「それ、さっきの逆だろ」
「いいんだって、後で直すから」
理由は、分からない。
分からなくて、困らない。
俺は、籠を置く。
音は、軽い。
中身が、減っている。
「助かった」
背中越しに、そう言われる。
俺は、頷く。
それで、十分だ。
水の音が、間を埋める。
切れず、強まらず、ただ、流れ続けている。
さっきの言葉は、もう、誰の動きにも影響していない。
仕事も、会話も、同じ速さで、進んでいる。
俺は、その流れの中に、戻る。
戻れてしまう。
問題なく。
それが、分かってしまう。
――世界は、何も壊れていない。
それが、はっきり分かるぶんだけ、胸の奥に残るものが、静かに、重さを増していく。
だが、それを口に出す理由は、まだ、ない。
今日の作業は、続く。
それだけだ。
手を止める。
息を、一つ、整える。
一段落ついたところで、俺は、少し場所を外す。
逃げるほどじゃない。
ただ、音が重ならない位置だ。
水は、同じ速さで流れている。
近づいても、遠ざかっても、変わらない。
さっきまで聞こえていた声は、距離の分だけ、薄くなる。
手を洗う。
指の間に残っていた土が、落ちる。
水は、冷たすぎない。
昼の水だ。
――問題は、起きていない。
言葉を投げて、怒鳴り返されたわけでもない。
笑い者にされたわけでもない。
誰かが、背を向けたわけでもない。
だから、整理しづらい。
胸の奥に残っているのは、拒絶じゃない。
拒絶なら、形がある。
距離ができる。
線が引かれる。
今、残っているのは、線が、引かれなかったという感触だ。
手を拭く。
布は、少し湿っている。
乾いてはいない。
まだ、使える。
――聞かれた。
確かに、聞かれた。
耳には、届いた。
意味も、通った。
ただ、次の動きに、つながらなかった。
石に腰を下ろす。
座り心地は、いつもと同じだ。
変わったのは、場所じゃない。
息をする。
深くは、しない。
整える必要は、ない。
怒りは、ない。
悔しさも、はっきりしない。
自分が、間違えたとも思っていない。
それでも、何も起きなかったという事実だけが、ゆっくり、遅れてくる。
反応が、ないという反応。
それは、声を荒げられるより、背を向けられるより、ずっと、静かだ。
だから、時間がかかる。
胸の奥で、言葉にならない重さが、居場所を探している。
形にしようと思えば、できなくはない。
だが、今は、しない。
形にすれば、理由が生まれる。
理由が生まれれば、次の言葉が出る。
まだ、その段階じゃない。
向こうで、誰かが笑う。
別の誰かが、呼びかける。
作業は、続いている。
俺は、立ち上がる。
戻ることも、できる。
戻らなくても、問題はない。
どちらを選んでも、世界は、同じように動くだろう。
――そのことだけが、静かに、胸に残る。
今日は、ここまでだ。
そう決めたわけじゃない。
身体が、そう動いただけだ。
道具を、まとめる。
順番は、変えない。
言葉は、もう、言った。
次に、言うべきことがあるかどうかは、まだ、分からない。
だが、今は、一人でいい。
それだけで、十分だ。
刃を、布で包む。
角が、引っかからないように。
縄を、同じ回数だけ巻く。
結び目の位置も、いつも通りだ。
――終わらせる動きじゃない。
帰るための手順だ。
区切りのための動きだ。
だが、片付けながら、胸の奥に、何かが、静かに残っている。
消えない。
大きくもならない。
ただ、位置を変えない。
言ったことは、事実だ。
言わなかったことも、事実だ。
どちらかを、取り消す理由は、ない。
水路を見る。
流れは、変わらない。
量も、昨日と同じだ。
岸の線も、動いていない。
世界は、整っている。
整いすぎている、とも言える。
だから、次に何をするかは、世界の側からは、見えてこない。
自分の側にも、まだ、形になっていない。
――やめる、という選択肢は、今のところ、置かれていない。
だが、続ける方法も、まだ、置かれていない。
それでも、「もう一度、言うか」という言葉が、はっきり浮かぶこともない。
浮かばないからといって、終わったわけじゃない。
立ち止まる。
一拍。
二拍。
足を、前に出す。
帰り道だ。
背後で、誰かが呼ぶ。
振り向かない。
呼ばれていない。
笑い声が、遠くで弾む。
作業の音が、まだ、続いている。
――村は、正常だ。
それが、責任を、軽くもしないし、重くもしない。
ただ、そのまま、残す。
今日は、ここまでだ。
だが、ここで、閉じるわけじゃない。
言葉は、使い切っていない。
責任も、引き取ったままだ。
夜になれば、朝が来る。
朝になれば、また、人が集まる。
その中で、同じ場所に立つかどうかは、まだ、決めていない。
だが、立たないと決めたわけでもない。
――まだ、終わっていない。
それだけが、はっきりと、残る。
世界は、今日を終える。
俺も、その中に、いる。
次は、まだ、決まっていない。
だが、次がない、とは思えなかった。




