シャンパンゴールドのため息、銀色の約束
第三部 雪解け
第七章 水辺の対話
翌日、結菜と海斗は、まるで旧知の友人のように、自然な時間を共に過ごしていた。温泉街の奥にある白銀の滝まで散策し、その力強い水音を聞いた 。レトロな外観が目を引く店先で、名物の熱々なカリーパンを分け合った 。
彼らの会話は、この旅の核心だった。
「あの鏝絵、すごいですよね」と結菜が切り出した。
「ええ」海斗は頷いた。「あれは、ただの飾りじゃないんです。この街は昔、大洪水でほとんどの建物が流されたそうです 。その再建の時に、旅館の主たちが競うようにして職人に作らせた。自分たちの誇りと、復興の物語を壁に刻んだんです 」彼は少し間を置いて続けた。「ミニマルな効率性じゃない…『我々はここにいる』という宣言だ。僕の建てるビルは…何を宣言しているんだろう?」
その言葉は、海斗自身の燃え尽き症候群と創造性の危機を、正直に打ち明けるものだった 。結菜もまた、キャリアの停滞感と、自分の仕事が本当に意味のあるものなのかという漠然とした不安を口にした 。互いに見せたその脆弱さが、二人の間の壁を溶かしていった。
過去の恋愛についても話が及んだ。誰かを責めるのではなく、どこか物悲しい省察の響きを帯びていた。関係がうまくいかなかったのは、自分にも原因があったのだと、二人とも静かに認めていた 。




