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シャンパンゴールドのため息、銀色の約束
第三章 光と影の交差点
シャンパンゴールドの喧騒から逃れるように、結菜は丸の内ブリックスクエアの一角にある、静かで洗練されたバーの扉を開けた 。重厚な木のカウンターの端に腰を下ろし、ジントニックを注文する。
その数分後、忘年会の息苦しさから逃れてきた海斗も、同じバーに吸い寄せられていた。彼は結菜とは反対側のカウンターの端に座り、メニューに目を走らせた後、少し珍しい銘柄のスコッチをストレートで頼んだ。奇しくもそれは、結菜が先ほどまで、自分へのご褒美に飲もうか迷っていた銘柄だった。
店内には、低いボリュームのジャズと、氷がグラスに触れる澄んだ音だけが響いていた。二人は言葉を交わさない。しかし、ふとした瞬間に視線が交錯した。それは、互いの顔を認識するというよりは、同じ種類の静かな憂鬱をまとった、同類の気配を察知したような、一瞬の交感だった 。
何百万もの人々がひしめくこの巨大な都市で、二つの孤独な魂が、同じ小さな空間に引き寄せられていた。だが、その邂逅はすぐに大都市の匿名性の中に飲み込まれていく。彼らは互いに見知らぬ他人として、それぞれのグラスを静かに傾けるだけだった。




