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夏の輪郭
八章 遠花火
人混みを離れ、二人は花火を見るために小さな丘を登った。遠くから見る花火は、より親密な体験だった。炸裂音は「ドン」という鈍い響きとなり、光の大輪は木々の黒いシルエットの向こうに、静かに咲いては消えた。
「色が、一瞬で消えちゃう」イラストレーターである碧が、夜空をキャンバスに描かれる儚い色彩について呟いた。
「タイミングが完璧だな」プロジェクトマネージャーである湊が、計算され尽くした打ち上げの連携に感心した。
そして、湊が言った。
「あっという間に終わるな」
碧が答えた。
「だから、きれいなんでしょう」
その言葉は、まるで予言のようだった。二人の関係の、そしてこの夏の、はかなくも美しい本質を捉えていた




