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夏の輪郭

第六章 潮騒と蝉時雨


夕暮れ時、二人は七里ヶ浜の海岸を歩いていた。太陽が沈んだ後の最後の光が、空を儚い「紅掛空色べにかけそらいろ」に染めている 。水面に伸びる光の道、遠くに浮かぶ江の島のシルエット。その絵画的な美しさとは裏腹に、聴覚は二つの圧倒的な音に支配されていた。一つは、寄せては返す波の、規則正しく穏やかな音――潮騒。もう一つは、木々を震わせる蝉たちの、耳をつんざくような混沌とした大合唱――蝉時雨だった。


潮騒の安定したリズムは、二人が互いのうちに見出しつつある安らぎと繋がりを象徴していた。一方で、狂騒的な蝉時雨は、彼らの日常に潜む不安や外界からのプレッシャー、決して消えることのない心のざわめきを体現していた。


しばらくの間、二人は心地よい沈黙に身を任せて歩いた。やがて碧が、蝉時雨を指して「うるさいね」と呟いた。湊は、波音に耳を澄ませながら「静かだね」と答えた。その短いやり取りは、二人がこの瞬間に何を求めているのか、その心の状態の違いを静かに映し出していた。


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