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第23話

─ コンコンコン。


ノックの音が聞こえる。まぶたの裏が少し明るいので、朝が来たことは理解出来ているのだが、どうにもまだ目が開かない。昨日、遅くまで起きていたせいだろうか?


「奥様~?そろそろ起きませんと。今日はまた早くから犬を探しに行くのではないですか?」


リンジーの声に私は昨日、失意の中、朝早くに起こしてくれと頼んでいたことを思い出す。さぁ、目を開けよう、そう思った瞬間──


「ギャァァァーーー!!」

とけたたましい悲鳴が聞こえ、私の眠気は一瞬にして吹き飛んだ。


目を開け、体を起こす。


「リンジー!どうしたの?!」


リンジーはまるでお化けでも見たかのように目を見開き唇を震わせながら、こちらを指さしていた。


「煩いな……」

私の隣で旦那様がモソモソと動いているのを感じる。


私は寝起きに最近では見慣れたワンコの頭をモフろうと振り返り……固まった。


「だ……旦那様……?」


「お、おいその呼び方は……」


と旦那様は慌てて私の口を押さえようとして……自分の腕を見てそして固まった。


そこには人間の姿の旦那様……しかも真っ裸だ。唯一身につけているものといえば、首輪の代わりのようなあの小さな鍵のついた鎖のみ。


「「も、戻ってる?!」」

私と旦那様の声が重なる。そして旦那様は驚いた顔でまた固まった私を思いっきり抱きしめた。


「ヴィヴィアン!戻ったよ!君のお陰だ!」


そして旦那様は目を丸くしたままの私にいきなり激しいキスをした。


「は?え?!」


私はわけが分からず、変な声を出したままだ。


「だ、旦那様……あのいつ……お戻りに?」


リンジーは恐る恐るといったふうに旦那様に尋ねる。

あ!そうだった……旦那様は自分探しの旅に出ていることになっていたんだ。


「リンジー、詳しいことは後だ。私は今からヴィヴィアンと大切な用がある」


私を抱きしめたままの旦那様の体が熱い。私は夜着を着たままだが、旦那様の肌から伝わる熱に、私も何故か顔が熱くなる。


私を見つめる旦那様の瞳は何故か熱っぽい。あれ?何だか変な感じ……。


「え?でも皆さまにお知らせを……」

リンジーがオロオロしていると、


「リンジー、昼までにはちゃんと起きるさ。それと!私は君に貰った本のお陰でちゃんと学習したから心配するな」


旦那様はそう言ってニヤリとした。リンジーの顔が一瞬にして真っ赤になる。


「あ!そ、そういうことで!わ、分かりました!その……失礼します!」


リンジーは慌てて背を向け、部屋を出る。


「あ!リンジー?」

私の声はバタンと締められた扉の音に掻き消された。

それと同時に旦那様の手が私の夜着にかかる。


「だ、旦那様?」


「安心してくれ。痛いことはしない。ちゃんと反省したからな」


私の夜着のボタンを一つずつ旦那様は丁寧に外していく。

私の太ももに何か固いものがあたっていることに気付き、私は恥ずかしくなって、ギュッと目を閉じた。


「コーネリアス……お前帰って来たんだな」


私と旦那様が連れ立って王宮へと向かったのは、お日様が真上に登り切る前だった。


殿下に帰国(?)の報告に向かった旦那様はにっこりと笑顔で頭を下げた。


「はい、昨晩遅くに。長い間留守にして申し訳ありませんでした」


笑顔の旦那様が珍しいのか、殿下もウォーレン様も目を丸くして驚いていた。


「コーネリアス……お前、どうしちゃったんだ?」


「別に。ただ、今回は自分を見つめ直す良い機会になりました。自分にとって何が大切なのかを知ることも出来ましたし。ちっぽけなプライドに振り回されていた自分が馬鹿馬鹿しくて」


殿下はポカンとしながらも、小さな声で呟いた。


「自分探しの旅とはそんなに良いものなのか……」


旦那様は私の方へチラリと視線寄越すと、小さく頷いた。


「殿下……今まで旦那様の代わりにこちらでお仕事させていただきましたが、ジェシカ王女のお見送りをもって、私の仕事納めとさせていただきたいと思います。至らぬところばかりでしたが、本当にお世話になりました」


私は頭を下げた。すると殿下は少し不機嫌そうに言う。


「明日から妖精姫に会えなくなると思うと寂しすぎるな。代わりにコーネリアスの仏頂面など見ても面白くないし……ヴィヴィ、明日からも一緒に働いていいんだぞ?」


「とんでもな── 」

私は両手の平を殿下に向かってブンブンと振る。すかさず旦那様は私の言葉に被せるように言った。


「確かに私もヴィヴィアンと日中離れているのは嫌なのですが、流石にここに毎日連れて来るわけにもいきません。私も殿下の顔よりヴィヴィアンを眺めている方が幸せなのですが……私も我慢するので、殿下も是非とも我慢を」


殿下は信じられないものでも見るように旦那様を見つめている。


「コーネリアス……お前変なものでも食べたのか?笑顔でペラペラ喋る……しかもヴィヴィにデレデレしてるお前なんて……まるで別人になったみたいじゃないか」


「別人……確かに一度別のものになりましたが……あ、殿下。申し訳ありませんが、ヴィヴィアンのことを愛称で呼ぶのは止めていただけますか?とてもムカつくので」


正直、私も旦那様の変わりようには驚いている。朝の出来事もそうだが……旦那様が甘々過ぎる。『まるで別人』私も殿下の意見に完全同意だ。

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