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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第5章:伝わる気持ち

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初お披露目はドキドキ!

「あちゃー! 猛君とキルケーさん先に始めちゃいましたね! せっかく水着見せ合いっこしようとしてたの……ま、でも! まだ披露していない二人がいますからね!」


「そ、そうであった……」


 愛美の言葉を聞いたせいで、ドキドキしちゃうアカーシャである。

 

 目的はもちろん、千恵子の水着姿を拝むこと――その事に気付いたアカーシャは、


(――違うぞ、我よ! 目先の利益だけではダメだとマヒルも言ってたではないか! 本来の目的は、旦那様と二人っきりなって、いい感じになることであろう!)


【戦え、ヴァンパイアちゃん】の主人公マヒルの口癖を思い出し、首を横に勢いよく振る。


 千恵子の水着も大事、でも、二人っきりになることはもっと大事なのである。


 すると、その様子が気になったのか、アラクネが心配そうな顔で覗き込む。


「アーちゃん……どうかしたの……? 体調、悪い?」


 アメジストのように輝く大きな目をパチパチ。

 同時に潮風が吹いてワンピース型の水着、その裾部分が揺れる。


「だ、大丈夫なのである! 少し考えごとをしていたのだ」


「そっか……それなら良かった……せっかくの海だし、みんなで楽しもうね」


「……であるな」


(み、みんなで……我が妹ながら、なんて純粋なのだ……己のことばかり考えていた我が恥ずかしい……)


 妹の純粋さが小さな胸刺さりまくるアカーシャ。


 時が経つにつれて強く自覚する気持ち。

 夜の国にいた時では味わうことはなかったからだろう。


 この場にいる家族や恋人たちが漂わせる平和な空気に、夏休み最終日というシュチュエーションが、アカーシャに好きという感情を爆発させたいと、まくし立てたのである。


(で、でも、これでいいのだ! 別に誰にも迷惑かけておらんし! それに夏の海で絆を深め合うのは、定番と知恵袋の皆も言っておったしな!)


「うむ!」


 ひとりでに納得するアカーシャ。


 ちなみに、その彼女の水着は入念な下調べをし、人外ズを率いて何着も試着し選んだ勝負水着だったりする。


「よーし! まずは我が水着を披露するとしよう!」


 ”まず”はという言葉で全てを仕切り直そうとする。

 だが、さすがに無かったことにはできない。


 できないはずだったのだが――。


「おお、アカーシャ様の水着ですか! 凄く楽しみです!」


「うん! きっと山本さんの趣味を抑えた素敵なやつだと思うなー!」


「です……とても可愛いに違いないの……です」


 わざとらしい棒読みのあと、顔を見合わせて頷く一同。


 この状況からもわかるように千恵子以外、どうやって選んだのか、どんな想いで着てきたのか、筒抜け。


 つまり、ここにはアカーシャ全肯定派(千恵子を除く)しかいないのである。

 

(ムゥ……ちょっとやめてほしいのだ。そんなバレバレの演技、旦那様に通じるわけないのである……)


 そんなことを思いながらも、その本心を口にすることはない。


 アカーシャは恋する乙女であると同時に、臣下と妹の気持ちを汲むことのできる王であり、姉なのだ。


「い、いや……”まず”はって、二回目じゃない……?」


 案の定、指摘する千恵子。


「う、うむ……そうであるのだが、見てほしいのだ……一番に」


 そういうと、アカーシャは顔を赤らめながら【ちえこの嫁】と書いた真紅のパーカーに手を掛けた。

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