夏休みスタート!!!
とんでもなく賑やかで、枠に収まらない引っ越し祝いから、二週間の時が流れた。
外では太陽が燦々と輝き、うだるような暑さが道行く人たちを襲い、蝉が存在を全力アピールする。
時折、風が吹くがその風も熱を帯びており、意味をなさない。
そんな真夏日の朝。
千恵子は、冷房が効いているリビングで、大の字で寝転んでいた。
「フローリングって気持ちいいよねー……」
なんともやる気の欠片もない声色で口にしては、ごろごろ〜、ダラダラ〜、ここぞと言わんばかりに怠惰生活を満喫している。
「うん……ひんやりして……気持ちいいです」
その隣で同じように大の字となって、惰性の極み”ごろダラ”を繰り返すアラクネ。
もう、ご理解頂けただろう。
いつだって仕事で追われているはずの千恵子が、余裕をぶっこいて、怠惰生活に身を投じていること。
今日から休みなのだ。
しかも、ただの休みではない。
社会人……いや、この日本にいる人間であれば、心躍ること必須な大型連休、夏・休・み・なのである。
もちろん、お疲れOL千恵子であっても、例外ではない。心躍りまくり、テンションが上がりきって……一周回ってしまいなーんもやる気が起きなくなった。
言うなれば、休みの向こう側にある戦地(会社)へ行かねばならないという現実から逃げたくなる現象だ。
「旦那様! ソファーならともかく、床で寝そべるなど、あんまりよくないぞ!」
え、ソファーはOKなの……? なんかルール甘くない? けれど、誰もそんなツッコミを入れることはなかった。
厳密にいえば、千恵子がその役目であるわけだが――しかし、一緒に暮らす中で成長した……成長した? 成長したのだ。
ツッコむだけが、自分の役目でないと。
決して、ツッコむのを忘れたわけではない。
断じて違う。
そんな成長期真っ只中な女性千恵子は、仰向けになったまま、キッチンで朝食を作るアカーシャに言った。
「えー、いいじゃん! いつも頑張っているんだからさー」
もはや休日の父親のような言動である。
対して、嫁ムーブから母親ムーブへと変化しつつあるアカーシャは、一度手を止めて、
「旦那様が頑張っていることは、我も認めておる! だが、それとこれとは別なのだ! それに、こうやって意味もなくダラダラ過ごすのは、アラクネにも悪影響を与える可能性だってある!」
腰に手を当てながら、もっともらしいことを口にした。
(それ……もう完全に“お母さん”じゃん……)
そんなふうに思いながらも、
「まぁ、うん……確かに」
横で同じように寝そべるアラクネを見て頷くのだった。




