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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第5章:伝わる気持ち

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夏休みスタート!!!

 とんでもなく賑やかで、枠に収まらない引っ越し祝いから、二週間の時が流れた。


 外では太陽が燦々と輝き、うだるような暑さが道行く人たちを襲い、蝉が存在を全力アピールする。

 

 時折、風が吹くがその風も熱を帯びており、意味をなさない。


 そんな真夏日の朝。


 千恵子は、冷房が効いているリビングで、大の字で寝転んでいた。


「フローリングって気持ちいいよねー……」


 なんともやる気の欠片もない声色で口にしては、ごろごろ〜、ダラダラ〜、ここぞと言わんばかりに怠惰生活を満喫している。


「うん……ひんやりして……気持ちいいです」


 その隣で同じように大の字となって、惰性の極み”ごろダラ”を繰り返すアラクネ。


 もう、ご理解頂けただろう。


 いつだって仕事で追われているはずの千恵子が、余裕をぶっこいて、怠惰生活に身を投じていること。


 今日から休みなのだ。

 しかも、ただの休みではない。


 社会人……いや、この日本にいる人間であれば、心躍ること必須な大型連休、夏・休・み・なのである。


 もちろん、お疲れOL千恵子であっても、例外ではない。心躍りまくり、テンションが上がりきって……一周回ってしまいなーんもやる気が起きなくなった。


 言うなれば、休みの向こう側にある戦地(会社)へ行かねばならないという現実から逃げたくなる現象だ。


「旦那様! ソファーならともかく、床で寝そべるなど、あんまりよくないぞ!」


 え、ソファーはOKなの……? なんかルール甘くない? けれど、誰もそんなツッコミを入れることはなかった。


 厳密にいえば、千恵子がその役目であるわけだが――しかし、一緒に暮らす中で成長した……成長した? 成長したのだ。

 

 ツッコむだけが、自分の役目でないと。

 決して、ツッコむのを忘れたわけではない。

 断じて違う。


 そんな成長期真っ只中な女性(アマゾネス)千恵子は、仰向けになったまま、キッチンで朝食を作るアカーシャに言った。


「えー、いいじゃん! いつも頑張っているんだからさー」


 もはや休日の父親のような言動である。


 対して、嫁ムーブから母親ムーブへと変化しつつあるアカーシャは、一度手を止めて、


「旦那様が頑張っていることは、我も認めておる! だが、それとこれとは別なのだ! それに、こうやって意味もなくダラダラ過ごすのは、アラクネにも悪影響を与える可能性だってある!」


 腰に手を当てながら、もっともらしいことを口にした。


(それ……もう完全に“お母さん”じゃん……)


 そんなふうに思いながらも、


「まぁ、うん……確かに」


 横で同じように寝そべるアラクネを見て頷くのだった。

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