繋がった……繋がった!?
「――という、感じです……」
「な、なるほどね……」
(キルケーさん、ブレないわー……てか、どうしよう……今から電話を入れて断るか? いや、でもここで断ったら、マジで真意不明なままになるよね。けどな――)
アラクネからの話を聞いて、千恵子は前言撤回したくなっていた。
惚れ薬の時もそうだったが、魔女の内緒ほど、ヤバいものはない。しかも、今回はお家にお邪魔しますよ? 覚悟はいいですか? という前フリまであるのだ。
とんでもないことになるのは、目に見えている。
(――もう良くないことが起きるの確定かも……どうしたもんかなー)
「……まぁいっか! どうせ巻き込まれるなら面白い方がマシでしょ!」
その【まっ、いっか!】精神で進めてきた結果が、自身でも手に負えないイベントの乱立であるというのに、学ばない千恵子である。
(って……何回、同じ轍を踏んでるんだろ、私)
いや、学んではいた。
けれど、これは千恵子の……女性の性。
トラブルに見舞われても、最初は気分が乗らなくても、最終的に楽しいを見出してしまう。
なので、どうしようもないのである。
そんなどうしようもないOL千恵子の的中率百パーセントを誇る、シックスセンスがフル稼働する中。
アカーシャが口を開いた。
「幅霧……? 何処かで聞いた名だな……」
その呟きを聞いたことで、千恵子の脳内にある出来事が蘇った。
独走蝙蝠というチンピラ集団を纏めていた存在と、工場長と何気なく交わしていた世間話。
「幅霧……幅霧……工場長……ハゲ……え――っ?!」
(いやいや待って……どっちも幅霧って名前は知ってたよ? でも、それは偶然で……いやでも、工場長の住まいは高級住宅街……平屋とかも言ってたよね……)
散らばっていたピースが一つ、また一つと音を立てはまっていく。
(そう言えば――手先が器用な息子も居るって言ってたような……そうだ、そうだ! 昔は女っぽくてとかの愚痴も言ってたっけ?)
見事な、実に見事なフラグ回収である。
もうなんだったら、自らフラグを立てて回収するのが、習慣化されつつあるほどだ。
千恵子のお家芸といっても過言はない。
(じゃ、じゃあ……も、もしかしてあのハゲが工場長の息子? もしそうなら……工場長……仕事も大切だけど、息子さんの教育も大切だよ……)
などと、心の内でツッコむ千恵子であった。




