表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第4章:繋がる縁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/129

また、現る!? 魔女キルケー!

 制服姿の見慣れた人影――その人物が近付くにつれ、千恵子と愛美は、自然とスプーンを持つ手を止めた。


「……あっ!!!」


「うわっ、キルケーさん!? って、その格好……」


 カウンター横に立っていたのは、またもや制服を着こなした魔女キルケーだった。

 

 しかも今回は白地に紺のライン、絶妙に短いスカート丈に白ニーソ。涼しげというより、ギリギリアウトである。


「やっほ〜♪ ちえちえさんに、マナちゃ〜ん♪ ここにいたんだね〜♪ でも、「うわっ」っていうのは、何だか傷ついちゃうからやめてほしいな〜」


「あー、はいはい! って、ちえちえ……完全に定着してるし……」


 タイミングよく現れた上に、”ここに”という言葉を千恵子は聞き逃さなかった。


 先見の明、つまりは女性(アマゾネス)第六感(シックスセンス)がそう告げていたのである。


 今、関わると百パーセント面倒ごとに巻き込まれるということを。


(言い回し的に、私とマナちゃんを探していたんだろうな……恩を感じないわけでもないけど、今は面倒ごとを避けたい!)


 平穏とまでは行かなくとも、アカーシャとアラクネ、そして自分。三人の生活にようやく慣れてきたのである。


 今は、それだけで十分。 


 だが、そんなことを知らないキルケーは、千恵子の腕をグイッと引き寄せて、


「そんな邪険に扱わないでよ〜! ちえちえ呼びも許して〜!」


 何を思ったのか、その腕を自らの豊満な胸で挟んだ。


(くそう……なんだこの、敗北感はっ! 触れれば触れるほど腹が立つんだけどっ!!)


 改めて言うことでもないが、千恵子は男性に間違えられるほどの……慎ましやかな感じなのだ。


 それが原因で独走蝙蝠のトップ、幅霧と名乗ったスキンへッド……いや、ハゲに男だと勘違いされたわけである。


 だというのに、天然全開な感じで、攻撃力の高い誰がどう見ても、慎ましやかではないものを押しつけられたわけで……


「わ、わかりましたから――っ! 離れて下さいって!」


 そう、ただ離れたい。

 コンプレックス刺激し、嫌な思い出を呼び起こす未知の塊から――なので、もう一度、腕を引く。


 今度は力いっぱいに。


 そして――なんとか逃れた。


「んっくっ、はぁはぁ………」


 知らない感触になかなかの腕力、息も絶え絶えである。


(無駄に力強いし、てか、わざと緩めたよね?)


 疑いの目を向ける千恵子に対して、


「んもうっ! そんなに照れなくていいのに〜」


 全く悪びれることなく、唇を尖らせては、軽口を叩く。


「い、いや、照れてないですから、普通に嫌がっていただけですから……」


 などと、軽く否定しながらも、すぐさま話題を変えた。


「というか、制服がバージョンアップしてません?!」


 これも立派な処世術である。

 会話の主導権を持つ為には、話題を提供する。そして先手を取るということは重要なのだ。


「でしょ? 今日は“進学校の夏服”なんだ〜。涼しげでしょ?」


(よし、上手く話題が変わった! あのままじゃ、キルケーさんのペースになるもんね)


 心の中でガッツポーズする千恵子である。


 すると、愛美が口を開いた。


「いや、涼しいっていうか……趣味が全開過ぎて……周囲の視線がエグいですって!」


 彼女が気にするように、学生たちの視線はキルケーに集中し、ヒソヒソと話していた。


(まじだわ……めっちゃ見られている……なかなかに恥ずかしいかも)


 さすがの千恵子も少し困ってしまい思考も動きもフリーズしてしまう。


 そんな中、愛美はスプーンを皿に置いて、


「正直言って――」


 ゆっくりと立ち上がり、キルケーを鋭い眼光を向けた。


(わかるよ、マナちゃん……私も知り合いだって思われたくないもん。着替えてほしいよね……うんうん!)


 愛美は同じ女性(アマゾネス)、口にせずとも自分が言いたいことが通じると――千恵子はそう思っていた。 


「――最高です!!!」


 それは無理なことであった。

 口癖は多様性。

 人の癖であれば全肯定していまう、愛美なのだから。


「さすが、マナちゃんわかってる〜♪」


「当たり前ですよ!」


 ハイタッチして、腕を組んだりして意気投合しちゃうヤバいヤツ等である。


(ち、違った……いや、切り替えていこう! いつものことだし)


 千恵子は千恵子で、多方面に適応力が爆発中だ。

 もはや、彼女以外捌くことはできないカオス状態である。


「ていうか、なんでここに?」


「ちえちえさんに聞いてほしいことがあったのと〜……あ、でもまずはランチだね〜! ボク、ここ初めてなんだ〜!」


 そう言ってキルケーは堂々と千恵子の隣に座り、店員に「大盛りカレー、ルーとライスも増し増しで♪」と注文していた。


「増し増しって……」


(来たことないのに、なんで慣れているんだよ……というか――)


「お金はあるんですか?」


「うん♪ ちゃんと稼いでいるからね♪」


「いや、どうやってですか……」


「それはね〜」


「それは?」


「魔女だからね〜♪ 色んな人を利用して稼いでいるんだよ〜! うふふ♪」


「……いや、笑えませんって……それが本当なら、今すぐやめて下さい!」


「冗談だよ〜! そんなに怒らないで♪」


「あー……はいはい」


(私、キルケーさん苦手だわー……)


 千恵子が一向に真意を掴ませない、のらりくらり状態な魔女キルケーに嫌気が差していると、同じ女性(アマゾネス)である愛美が口を開いた。


「……魔女さんということだけあって、なかなかにミステリアスですよね! 私的には、ポイント高いのですが――どうやって収入を得ているのか、純粋に興味があります! やっぱり薬品とか、オンライン販売しているとか……? いや、誰かと契約してみたいなこともありえますかね……」


「うーん……まぁ、それもあるかなー」


「って、あるんかい! じゃなくて! 薬事法、薬事法ですよ!」


「た、確かに! キルケーさん薬事法は守らないとですよ?」


「うん♪ 気をつけるね♪」


(いや、「うん♪」絶対、聞いてないし、意味わかってないよ……)


「はい、そうして下さいね!! 法律は大事ですから!!」


 などと口にし、直後――愛美は「うんうん」と頷く。

 その表情は、異種間コミュニケーションを取れたかのように満足そうだ。


 例えば、海外から来た観光客に対し、それとなーくカタコト英語で道案内ができた時のように。


(マナちゃんは、通じたと思っているっぽいし)


 何だかんだでいつも通りの流れに、千恵子は疲れたように笑った。


(ほんと、にぎやかな毎日だな……。でもまぁ――)


 その横をチラリと見れば、スーツ姿の部下兼同志が、目立ちまくりな制服姿でも堂々している魔女と、会話を楽しんでいた。


(まっ、まぁ……仲いいことは、良きことだよね)


 千恵子は呆れ半分、でもどこか楽しげにため息をついたのであったが――。


(あれ……? 結局、キルケーさんって、なにで稼いでいるんだ?)


 見事、話を逸らされてしまうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ