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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第3章:魔女の決心

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近づく二つの怪しい影

 しばらくして、ドラッグストアで買い物を終えた千恵子は、商店街を抜け、駅近くの公園まで歩みを進めていた。


「夕日かー」


 オレンジ色の夕日が綺麗で、遊んでいた子供たちも家に帰ろうとしている。


 そんなありふれた光景に、なぜか胸に来るものがあって、早く家に帰りたい……そんな気持ちを抱かせる。


 そして、ふと思い出す。


(そうだ! ここで初めてあのかっこいい大人アカーシャを目にしたんだよねー)


 月夜の元、畏怖と憧れを抱かせる圧倒的な存在感を放つアカーシャの真の姿を。


「ふへへ……かっこよかったなー」


 ちょっと下品な顔をしてしまう千恵子。 

 

 忘れているかも知れないが、彼女は人外オタク、そして絵に描いたような吸血鬼、ヴァンパイアが大好き……いや、大好物なのだ。


 更に、これをきっかけとなって、芋づる式にとある”出来事”と”名前”を思い出した。


(幅霧とかいう、チンピラだっけ? あの時の顔ったら、今思い出しただけで……ふふっ)


 公園でアカーシャがひと暴れした、あの日のことである。


「って、ああ――っ!!」


(待って……幅霧って工場長と同じ苗字じゃん!! ということは……身内だったりして……偶然だよね?)


 職場で感じた違和感はこれだった。

 

 これが田中や鈴木、または佐藤であったなら、偶然だと言い切れただろう。


 けれど、そう幅霧なのである。


「あは、あははー……」


(偶然じゃないや……つ? まさかね? だって、もしそうだったなら……)

 

 もしあの時のチンピラが工場長の身内だとしたら……自らの行動を省みながら、


(いや、落ち着け私! あっちからふっかけてきたし! こっちは何もしていないし、何だったら犬を救ったくらいだし! だから、私は悪くない……うん、悪くない――)


 自らの潔白を言い聞かせるように、何度も胸の内で繰り返した。


 確かに直接何か危害を加えたわけではないし、向こうから手を出したのだって、その主張通りである。


 けれど、主要人物であることは間違いなくて、千恵子が居なければ起こり得なかったわけで……。


(うーん、やっぱ私にも原因はあるか……)


 二つの考えを行ったり来たりと忙しい千恵子である。


 これが常人であれば、最終的にその後のことを想像して青ざめてしまっただろう。


 例えば、上司に呼び出されたり、今後の社会人生活に影響を及ぼすのではないか? そんな不安を抱えて――。


 しかし、彼女は、山本千恵子は違った。


「ま、気にしすぎでしょ! それに――」


 すぐさま思考を放り投げて、忘れることにした。


(……変なフラグ立つのも嫌だし、忘れよう……そうしよう)


 頭を左右に振って、振りまくって頭に浮かんだイメージすら消す。

 社会を生き抜く為には、こういったリスク管理も大切なのである。


 まぁ”フラグ”を意識した時点で、もうフラグは立っていそうな気もするけれど。


 そんなフラグ折りに失敗した? 千恵子の元には、案の定、近付く二つの影があった。

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