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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第2章:トラブルは突然に

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同志見つけました!

 アカーシャとフリーディアが愛美の家に訪れた日から、三日後。


 鬼の伝承や漫画が入れられた本棚。壁際には甲冑や兜、そして鬼のフィギュアが飾られ、奥には刀が一本置かれた部屋で、異世界と現代、二人の臣下による奇妙で和やかな生活が始まっていた。


「フリーディアちゃんって、好きなものとかあったりします?」


 鬼の刺繍が入ったエプロンを着た愛美は、一階のキッチンから、リビングで正座しているフリーディアへと声を掛けた。


 三日目にして、デュラハンであるフリーディアをちゃん付けで読んでしまうのはさすがである。


「あ、いえ……出されたものなら何でも食べます」


「んもう! そればっかじゃないですか!」


(せっかく、フリーディアちゃんと1つ屋根の下で暮らせるようになったのに、これじゃ意味ないよぉー! どうしたら、もっと仲良くなれるかなー?)


 話題を振っても、何かを聞いてもなかなか自分を出さない。そんなフリーディアで愛美はどうしたらいいのか、手をこまねいていた。


 そんな中ふと、妙案が頭に浮かんで、


(そうだ! デュラハンって言っても騎士だもんね? じゃあやっぱり――)


 エプロン姿のまま、キッチンから部屋の奥へと向かいそこに置かれた刀を手に取った。


 この刀は武将の渡辺綱が鬼の腕を斬ったという伝説から【鬼切丸】と名付けられた、鬼切安綱のレプリカ。


 しかしながら、レプリカといっても、模造刀ではなく、刀匠の手によって実際に鍛えられた“本物”の刀である。


 それを愛美はフリーディアの前に差し出す。


「フリーディアちゃん、フリーディアちゃん! これに興味はない?」


(騎士と言えば、武器だもんね! 絶対食いつくはず――)


「こ、これは!」


 刀を差し出された瞬間、フリーディアは目を輝かせた。


「やっぱり、これ、かなりの業物だったんですねー!! いや、実は気になっていたんです! この甲冑に兜まで! 見事な造りです!!」


 愛美の読み通り、フリーディアは武具に目がない。

 むしろ彼女と同じオタク気質なんじゃないかと思うほどだ。


 つまりは――。


(もしかして……同志だったりする?!)


 愛美の考え通りである。


「ですよね?! すんごくいいのですよーーー!! 見て下さいこの波紋!! これだけでお酒が飲めちゃいますよね? ね?!」


「はいっ! わかります!! 実のところ、私も武具には目がなくてですね……あ、そうでした! このサーベルを見て下さい!」


「おお、これは両刃刀身ですね?! いや、裏刃でしょうか?」


「さすがです。おみそれ致しました。まさか、そんなことをわかる人間がいるなんて……す、すみません! 人間というのは失礼でしたね……つい、嬉しくなってしまい――」


「ぜーんぜん、全く気にしてないですよ! だって、人間ですし!」


「ふふっ、確かにそうですね」


「うふふ、ですです! あ、そうだ! アカーシャちゃ――じゃなくて! アカーシャ様がハマってる漫画もあるんですよー! あの本棚に」


 そういう愛美は本棚の真ん中に並べられた【戦え、ヴァンパイアちゃん】漫画を指差した。


 その言葉を聞いたことで素早く立ち上がり、姿勢を正して、瞬時に本棚の前に移動した。


「なんと! それは絶対に読まねばなりませんね!」


「ぜひぜひー! 凄く面白いので読んでみて下さいーーー!」


「はい!」


 堅く緊張していた顔が柔らかくなって、優しい笑みを咲かせるフリーディア。


 (やっ、たぁぁーーーーーー!! もっと仲良くなるぞーー!)


 人外の同志を得たその瞬間、愛美の脳内では、桜も満開となった。

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