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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
最終章:山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?

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ずーっと見守りたい♪


 開いた扉から、飛び出てきたのは――。

 

「あー! 僕と言うものがありながら、浮気だぁぁーーー!!!」


 ニーハイソックスに制服、そしてクリーム色のカーディガンという、時代を感じる(一周回って新しいかも……?)格好をした魔女キルケーであった。


 両手に花状態??? の猛に対して、本当に嫉妬しているかのような視線や仕草。


 それはまるで恋人かのような雰囲気だ。


 そんな彼女を前にし、猛はため息をついて、


「はぁ〜……」


 先程までテンポ良くミシンを走らせていたというのに、頭を抱えて面倒くさそうにしている。


 だが、キルケーは全く気にする素振りを見せない。


 それどころか体を弾ませながら、三人に近づいた。


(さーて、猛くんはどう返すかな〜♪)


 そう、この魔女――嫉妬なんてしておらず、ただ猛が対応するのかを楽しんでいたのだ。

 

 なんともはた迷惑な魔女である。


「あのなぁ……なにをどう見てそうなんだよ……」


「なにをって……女の勘ってやつ?」


 体をくねらせてから顔を近づけての上目遣い。


 女の勘などと口にしたが、その言葉に意味はないのだ。


(って、顔真っ赤だし♪ 猛くんは本当にからかい甲斐があるな〜!)


 良くも悪くもブレない。 

 しかしながらからかい上手を通り越して、ウザったくなっているのは間違いないわけで――。


 けれど、

 

(みんな……仲良く出来ているね♪ それもこれも、アカちゃんと千恵子さんのおかげだ!)


 同時に結んできた縁と、教え子たちの成長を心から喜んでいた。


 このウザ魔女、割と常識があったりするのである。 


 だが……。


「んー、でもでも〜、僕とこの子たちとじゃ、なんか違うくない? ちょっぴり妬けちゃうかも♪」


 そういうと、ポン! と手を叩いて、


「もしかして……小さい子の方が好き……とか?」


 またもや、ウザ絡みモード発動した。


「んなわけねーだろ! 俺は、ロリコンじゃねえ!」


「んじゃあさ……僕みたいなー♪ 大人っぽいのが……す・きぃ?」


 胸元のリボンを緩めてからの、ウィンク。

 なんとなくレトロな感じはするが、これがキルケーにとって自然なアプローチ(からかい)なのである。


 そんなウザレトロ魔女に対して、多感なお年頃男子の猛は、そのアプローチを真に受けたようで、タタタッとミシンを走らせると顔をトマトのように真っ赤にして固まった。


「な――っ?!」


 こちらもこちらでブレない猛である。


 まぁ、少しばかり耐性が出来ているような気もするが。


「キルケーさん……そういうの、あんまり良くないと思います」


「た、た、確かにちょっと刺激が強いような……もう少し見たいような……二へへ」


 いつぞやのアカーシャのようなだらしのない笑みを浮かべるくれはである。


 ゆっくりだが、着実に女性(アマゾネス)への道のりを歩んでいる。


「くれはちゃん……そういうのは、まだ早いと思います……」


 アラクネは頬を膨らませて、そう口にすると優しく、くれはの目をその手で覆った。


「な、なはっ?!」


 なぜか頬を染めて、あたふたする。

 突然、視界を遮られたことへの驚きというよりは、また違ったなにかからくる戸惑いのように見受けられる。


(未来の山本さんと、アカちゃんだったりして……)


 自然と二人の姿が、重なっていく。


 今回はちゃんと女の勘を発揮させるキルケーである。


 世界の大きさに比べたら、ちっぽけな輪。


 でも、それがゆっくりと広がり、知らぬ間に繋がって、互いに影響を受けていく。


(どうなっていくのかな……)

 

 確かにこの行く末は、分からない。


 けれど、目の前で繰り広げられている賑やかなやり取り、まだまだ続いていくことを感じさせる、幸せに溢れた空間。


 その光景が見せてくれる、優しい未来の匂いが愛しく、自分もそこに居たいと思える。


(ふふっ、未来ってこうやって広がっていくのかな♪)


 魔女アリスから始まった不思議な縁。

 今に至るまで、そこまで意識をしていなかった。


 いや、そんな時間はなかっただけかもしれない。


 もらったもの、教わったものを生かして、広い世界を見て回り、いつしか誰かの役になりたいと考えるようになった。


 だが、人間は愚かでどれだけ施そうとも期待しようとも違いを認めず争うという同じ過ちを繰り返した。 

 

 けれど、キルケーは思い出したのだ。


 それはあくまでも、人間の持つ一つの側面であったことを。


(そうだったね……そういえば……昔、アリスも言ってたな〜♪)


『人はね……アンバランスだからいいのよ♪ 覚えておいてね!』


 太陽のように笑う姿に、なんでもない日常での言葉。

 それが今になって呼び起こされた。


 そして、後に何の因果かアカーシャ、アラクネに師事し、今度はアンバランス極まりない人間たちに教えている。


(……人に教えるって幸せだね……アリス♪)


 何千年の時を超えて、答えを得たキルケーであった。


 彼女は、優しい眼差しを三人へ向けると、いつものように大袈裟な反応を見せた。


「うえーーーん、アラクネちゃんも、くれはちゃんも冷たいよ〜! お姉さんショック〜!」


「はいはい……」


「わ、私は……いいと思います! そういう大人っぽいの!」


「いいわけねぇだろ! いいか? 人が嫌がっているのをだな――」


「ですよ! この世界には視聴可能年齢というのがあってですね――」


 色々と道を外しそうなくれはにそれぞれの視点で、どうにか修正しようとする。


 その全てが輝いて見えて、守りたいと思えて、


(楽しいな♪ ずーっとこの子たちの行く末を……見守ろう♪)


 と心に決めるキルケーであった。

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