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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
最終章:山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?

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認められるってなんかいい!

 ギョニソで乾杯という彼らしいイベントから、時刻はさらに進み、日付が変わろうとする深夜24時。


 周囲はすっかり暗くなり、マンションのベランダには心地よい夜風と秋の虫の音が響いていた。


「今日は楽しかった。まさかこんな日が来るとはな……。千恵子さん……本当にありがとう」


 艷やかな白髪を靡かせて低い威厳のある声を響かせるウラド。

 けれど、その声色はどこか明るく優しさと信頼を帯びていた。


『ありがとう』という言葉は、よく耳にするし、そんなに特別な言葉ではない。


 だが――。


(なんだろう……なんか嬉しいな)


 存在を肯定してもらえたような、唯一無二のぬくもりが、胸の奥にじんわりと広がっていくのを感じた。


 千恵子は、頬を赤らめながらも、なんとなーく心当たりのあるシュチュエーションを思い浮かべる。

 

(もしかして、これが相手の父親に認められるとか、そういう気持ちなのかな〜?)


 敢えて結婚と言わないのが、その頭の片隅にほんの少しだけ残された常識的な部分である。


 まぁ、それも時間の問題なのかもしれない。


「っと――旦那様♪ どうしたのだ? ニマニマして……?」


 送り迎えをする為に、エプロン姿のまま、イビキをかいて寝ている臣下組を跨いで、リビングからベランダへと駆けてきたアカーシャだ。


 いつもとは打って変わって、ツッコミ役である。


 とはいえ、千恵子のように鋭いものではない。

 ソフトで優しいナチュラルなツッコミであった。


 ちなみにだが、猛率いる独走蝙蝠とキルケーは、門限もあるので、午後8時にはマンションをあとにした。


 すっかり真面目なチンピラ集団である。


「フフッ、すっかりその格好が板についているな」


「うむ! 我は今この時がいっちばーん幸せなのだ!」


「そうか……」


 アカーシャの言葉に微笑むと、ウラドは話を切って、千恵子に語り掛けた。


「そうだった。これは聞かねばならないな――」


(な、なに?! 急に真剣な顔をして……ま、まさか!?)


 千恵子の脳裏によぎるは、異世界転生した時に必ずと言っていいほど起こり得る偉大なるテンプレ――令嬢の婚約破棄イベント。

 一度認めた仲を、色々な要因によって断るご都合的なやつだ。

 いやもう、本当に色々と! ツッコミどころ満載なのだが……まぁ、そんな些細なことはどうでもいいのである。


(やばい……どうしよう。このままじゃ、アカーシャが帰ることに――)


 といったように、千恵子がご乱心なのは間違いないわけで。


(アカーシャも慌ててるし)


 対して、ツッコミ役になろうとしていたアカーシャも何故か慌てふためいていた。

 


 ☆☆☆



(実にまずい展開なのだ!)


 父ウラドの問い掛けに焦るアカーシャ。

 このままでは婚約破棄イベントになる! アカーシャはそう考えていた。


 そう、奇しくも千恵子とアカーシャ、全く同じ結論に辿り着いていたのだ。


 これが夫婦の? 夫婦の見えない絆……絆? 絆である。


 なにはともあれ、二人同時に焦っているあたり夫婦といっても過言ではない。


(旦那様も焦っておるな……この状況下で同じ推理に行き着くとは……さすがなのである!)


 そこは、大好きな旦那様と以心伝心できて嬉しいー! と悶えるのが、アカーシャじゃないの? と思うかもしれない。


 けれど、彼女は元々、どこかズレているのである。


(となると、ここはお手並み拝見なのだ!)


 心の内でそう呟くと、二人のやり取りを見守ることにした。


「山本さん、いや、千恵子さん……アカーシャの想いに応える覚悟はあるのか?」


「「な、なっは――?!」」


 ウラドの予想外の言葉に、奇声を上げるアカーシャと千恵子。


「なんだ? 二人して……なにかおかしなことを言ったか?」


 いや、言っていない。

 おかしいのは、OL千恵子とヴァンパイアアカーシャである。


(ぬぉぉぉぉ! ま、まさかのノーマルなやつだったのだ〜! そう言えば、父上はこちらの文化知らぬではないか! 我のバカバカ!)


 遅れてきた感情、嬉し恥ずかし以心伝心からの読み間違いに、ポカポカと自分の頭をコミカルに叩いて、アカーシャはふと気になった。

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