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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
最終章:山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?

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ミスリードなアカーシャ(本人は至って真剣です)

「な、なに?!」


「なにとは……?」


「いや、なんで今、くっつくのさ! まずはどう言う関係は話さないとでしょ!!」


(さすが旦那様、我の考えの先にいく……夫婦として、2人で父上に立ち向かうということであるな……)


 隣で戸惑う千恵子をよそに、アカーシャはそんなことを考えていた。


 いつも通り絶妙なズレである。


 そんなわけはない! 例のごとく何処からかツッコミが飛んできそうだが、この世界の抑止力担当千恵子はそんなところではない様子であった。


「な、なに?! なんでこのタイミングで腕を組むの?! 意味わかんないからっ!」


 ミスリードを続けるアカーシャ対して、氷のように冷やかな視線を向けるウラド。


 この温度差だけでどうにかなりそうだというのに、背後からは、いつメンたちの不適切極まりない反応を受けて、


「外野もうっさい! 静かにしてっ!」

 

 平常心を保てず、全方位にキレてからの、どうにかしてアカーシャの腕を振り解こうと暴れまくるといった感じに。


「ニヒヒ♪ こんな時も照れるとか、やはり旦那様は可愛いのだ!」


「うっさいうっさい! 私は可愛くないから!」


(ムフフ……そう言いながらも真っ赤ではないか! 毎日見ているが、やはりたまらぬな〜! 旦那様は♪)


 アカーシャの褒め殺しに、トマトばりに赤くなる千恵子。なんだかもうすっかりまんざらでもない感じである。


 すると突然――空気を切り裂くような低い声が響いた。


「アカーシャよ……私を無視するとは――」


 が――それを掻き消すように、眩い光がベランダの外から差し込んだ。

 

 まるで空そのものが裂けたかのような白光。

 光は渦を巻きながら徐々に人型を形づくり、やがて――収束し、完全に収まった時には白銀の鎧を纏った人物が立っていた。


 その人物は、ウラドを目に入れた途端。


 片膝を着いて臣下の礼をした。


「ウラド様……少し遅れましたが、レオン・ランスロット馳せ参じました!」


「父様!」


 娘フリーディアの声に気付いたようで、レオンはすぐさま立ち上がり振り向いた。


「おお……フリーディア! お前もやはりここにいたんだな!」


「はい……その報告できず、すみません……」


「そうだな……そこは反省すべき点だ。だが、それはまたあとで聞くとしよう……それよりもだ――これはどういう状況だ?」


 レオンはどうやら状況を飲み込めていないようで、プラチナブロンドの髪を掻き分けながら、周囲を確認。


 時たま眉間にシワを寄せては碧眼を見開いたり腕を組んだりと忙しない。


(……レオンではないか! サンテリに続いてこやつまで来ていたのか! ムフフ♪ ちょうどいいではないか! この際である全員に我と旦那様の仲を見せつけるのだ!)


 なんというか、キルケーに返り討ちされたサンテリが可哀想な感じである。


 しかしながら、弱肉強食が夜の国の常識。


 そもそも襲ってきたのは、サンテリであってキルケーは何もしていないのだ。


 そこに同情もへったくれもない。


(まっ、その内目を覚ますであろう!)


 アカーシャは、フローリングで白目を剥いたまま伸びているサンテリを横目に、娘と感動の再会をしているレオンへと声を掛けた。


「レオン、久方ぶりだな!」


「これはこれは、アカーシャ様。ご無事で何よりです!」 


「堅苦しい挨拶はいい。それよりもだ……フフッ、お前にも紹介してやろう!」


「紹介……ですか?」


「うむ!」


(あ……そう言えば、旦那様の名前は言ってなかったな……よしっ!)


 重大なことに気付いたアカーシャは、拳をぎゅっと握り締めて、


「えーっと、こちらが我の旦那様である人族の山本千恵子だ!」


 と、何の抵抗もなく紹介した。


「愛が天元突破しましたよ……フリーディアさん……」


「は、はい……これは純愛エンドですね。愛美殿」


 若干、父レオンの存在を気にしつつも暴走するフリーディアと相変わらずな愛美。


 そんな臣下組を筆頭に外野たちのボルテージはMAXとなっていた。


 対してお通夜状態になる当事者の千恵子。


「なにが……愛が天元突破よ……」


 そして、その前では氷山のように佇んでいたウラドまでもが、普段とは違う状況に追い込まれて、


「ア、ア、アカーシャが結婚……私は、祖父……ということ……なのか?」


 などと、ぶつぶつひとり言を呟き、もちろん来たばかりのレオンも何一つ状況を理解できず、


「は、はい……?」


 アカーシャの告白に首を傾げるだけであった。


(フフッ♪ なんとなく伝わったのだ!)


 と満足げに微笑むアカーシャを除いて……状況を理解できた者は、この場に1人もいなかった。

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