表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第1章:推しとの出会いと同居生活の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/129

初めての転移魔法(二回目)

 千恵子のマンションから、私鉄を乗り継ぐこと四十分の場所にある工場地帯。


 棺桶間(かんおけはざま)ネジ株式会社という千恵子が勤める中小企業付近の路地裏。


 彼女は魔法を体験したいと好奇心から、アカーシャに送り届けてもらったのである。


 念のため人にバレるのは良くないので、人通りが少ない路地裏を選んだ。

 

「ゔ――っ! て、転移魔法ってこんなに酔うんだね……うっぷ」


 選んだわけであったが、初めて(起きたままで)の転移魔法がよっほど堪えたようで、その千恵子の顔面からは血の気が引いて、今にも嘔吐(キラキラ)しそうな状態になっていた。


(って、すんごく楽しそうだし)


 えずく千恵子の前では、アカーシャが発達した犬歯を光らせて、


「フハハハハー! なかなかによい場所であるな!」


 ツインお団子を揺らしながら、ピョンピョンと跳ねていた。

 ちなみにこの髪型は、千恵子が結ったものである。


「髪型を気に入ってくれて何よりだけどさ、その服はどうにかできないの? ――うっぷ」


 千恵子はアカーシャの服を見て苦笑する。

 それもそのはずで、アカーシャの服装は【ちえこの嫁】と書かれた自己主張強めな真紅のダボダボパーカー。

 フリルショートパンツと黒のブーツという攻めに攻めまくったものなのだ。


 千恵子の言葉に、アカーシャはこれでもかと言わんばかりに胸を張って見せて、


「このままがいいのだ! それにこれは我と旦那様が行なった初めて共同作業であろう?」


 ニンマリ幸せそうな笑顔をアカーシャに向けた。


「こらこら、誤解を招く言い回しをしない。確かに共同と言えばそうだけどさ」


 千恵子が頭に浮かべたのは、ここに来るまでの出来事。


 リビングのソファーで自分がうなだれていたら、アカーシャが転移魔法で送って行くと言って、それにほんの少しラッキーと思って返事をした。


 そこから――。


(この世界での服装の話をしたんだよね……)


 時間に余裕が出来たことで、自然と心にもゆとりが出来て、洋服について話をした。


 でも、それが問題であった。


 初めはアカーシャの見た目が可愛いから似合うはずという軽いノリで見せた。


 自室にあった、ダボダボパーカーにブーツ姿の吸血鬼少女マヒルが活躍する【戦えヴァンパイアちゃん】という漫画を。


 だが、それがこの事態を招いてしまったのである。


(まさか、ハマるとは思わなかったよね……ヴァンパイアと吸血鬼は違うとか、色々と言ってたのにさー、その上、最終的には見た目も一緒にしたいとか言い始めるし。もちろん、悪ノリしちゃった私にも原因はあると思うけど)


 好きな物を前にして、語り合うことが出来て、共有することが出来て嬉しい。

 

 つまりは社会人になってから、会社関係以外で趣味を理解してくれる友達が出来て嬉しくて、ついつい歯止めが効かなくなった感じである。


(でも、便利だよねー……どういう原理か検討もつかないけど、血液を操作して衣服まで作っちゃうんだからさ。私が着せたパーカーもなんか色々と変わってるしね。良くない方向に)


 実は【ちえこの嫁】と書かれた自己主張強めな真紅のダボダボパーカー、千恵子が強引に被せた物だったりする。


 それをアカーシャが自らの血で染め、その有り余る独特なセンスでデザインしたのだから、共同作業などということを言ったのだ。

 

 そんなことを考えながら、千恵子はアカーシャの服を凝視する。


 彼女の視線に気付いたようで、アカーシャは真紅の瞳を瞬かせて再びニンマリして、


「そんなに見つめてどうしたのだ? もしや、我に恋でもしたのか?」


 パーカーをめくって可愛いおへそをちらりと見せた。


「わ、我はいつでも準備出来ておるぞ?」


 大胆行動に出たのだが、その顔はトマトのように真っ赤である。


「やめんか! 社会的に死ぬわ!」


 千恵子はつかさずツッコみ、めくられた裾を素早く戻して、


「というか、恋って、何度も言ってるけど私は女。だから、そういった感情は抱かないの! そ・れ・にっ! 見ていたのは服!」


 都会で働く女性(アマゾネス)として、しっかりと反論した。


「ふむ……しかし、旦那様の部屋には、そういった趣向の本があったような……」


「だあぁぁぁーーーーー! あれは芸術みたいなものなのっ!! だから、参考にしないっ!!!」


 アカーシャからの、予想外の反撃に慌てふためく。

 否定、考えを修正する為に、両手をブンブン勢いよく振って、振りまくる。

 だが、正直なところ思い当たることしかない。


(最悪だ……)


 そう、心の内で落ち込む。


 けれど、アカーシャには何故慌てているのか、伝わっていないようで、首を傾げて、


「むぅ……そうなのか」


 頷き、笑みを浮かべた。


「でも、我は別に気にしないぞ? 恋は自由であるべきなのだからな!」


 心の中でそれはどちらかというとアカーシャでは? 私一度もそんな言葉とか、雰囲気とか出してないよね? などと、呆れながらもやはり、ツッコむことを止められない千恵子であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ