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異世界行って無双したい人の話(乙)

「あのぉ、ここで異世界を案内してもらえるって、ネットで見たんすけどぉ」

「はぁ、また異世界などという若いもんが来たか」

「異世界、行けないんすかぁ?」

「たしかにいろんな世界へ案内することは出来る。で、おぬしどこへ行きたいのじゃ?」

「どこでもいいけど、異世界行って、む、む…、無双!」

「異世界で無双じゃとぉ? どうも最近の若い奴の頭の中はそればっかりじゃ。頭がゲームで埋め尽くされておるようじゃ」

「で、どんな異世界があるんすかぁ?」

「おまえさん分かっておるのか? はぁ~。まあいい。いろんな世界があるにはあるが、異世界で無双とは、ともあれお前さんがそこで抜きん出た存在になることじゃ。で、そうしたいのじゃろう?」

「はぁ」

「ところでお前さん、今この世界で落ちこぼれておるのか?」

「はぁ」

「まあお前さんを見れば、そんくらいのこと、一発で豪快にお見通しじゃわい」

「はぁ」

「じゃがこの世界で何も出来んようじゃ、どの異世界へ行ってもまた落ちこぼれるぞ!」

「はぁ」

「はぁじゃない! で、お前さんは何が得意なのじゃ?」

「ええと、ええと…」

「一つくらい得意なことはあるであろう?」

「はぁ…」

「一つもないのか?」

「はぁ」

「はぁばっかりか?」

「はぁ」

「もう良い。お前さんの『はぁ』は金輪際気にすまい。で、何か一つくらい得意なことがあるであろう。それがないと異世界で無双も何も…」

「あ! そうだ。この前おかんにねだって新しいゲーム買ってもらった」

「おかんに? で?」

「これはばちくそ素晴らしいゲームだよと、ばちくそおかん説得したら、あっさり買ってもらったんだ」

「ばちくそ…、おお、それだ!」

「え?」

「つまりお前さんは、人を説得するのが得意なのじゃな」

「あ! もしかして、そうかも♪」

「実は異世界というても、枠というものがあってのう」

「枠?」

「異世界に空きがないとそこへは行けん」

「はぁ」

「じゃが今、空きはひとつだけある」

「本当すか?」

「まぁ、あまり人気のない異世界じゃが…」

「あまり人気がなくて、で、ええと、ええと、どんなとこすか」

「ところで訊くが、お前さん、地球が丸いことくらい知っておるよな」

「はぁ、それくらいは。でも…」

「地球が回っておることも」

「ええ、それも知ってますよ」

「それは良かった。実はガリレオガリレイが登場する少し前の時代に、空きがあるのじゃ。そこはヨーロッパで、教会が豪快に幅を利かせておった、いわゆる中世の暗黒時代でな」

「中世の…、暗黒? なんかかっこいいっすね」

「かっこいい? ほうほう、それはちょうどよい。どうだお前さん、そこへ行って教会関係者を説得してはどうかのう。説得は得意じゃろう。何と言っても、お袋さんを説得してゲームを買わせたくらいじゃ。だったらその時代の教会関係者の説得も出来るやもしれんぞ」

「やもしれん?」

「そうじゃ。つまり地球は丸くて回っておると、奴らを説得するのじゃ」

「はぁ」

「しかしてもしそれが出来たらなら、おまえさんはガリレオに先んじて歴史に名を残す。つまり中世のヨーロッパで、科学者として立派に無双出来るであろう」

「はぁ?」

「ただしくれぐれも、宗教裁判には掛けられんよう注意するのじゃ。下手をすると火あぶりじゃ。わっはっは」


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