表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

自己転生繰り返したら(動画YouTube配信中/とあるコンテストで入選)

 彼はごくごく平凡な人間だった。

 つまり、生まれ持った才能が特別高かった訳ではない。

 だが何かの手違い、まあ神々の手違いかもしれないのだが、ともあれ何かの手違いで、彼は一生を終えるとまた元の自分に転生するという(これをネット小説の世界では自己転生というらしい)不思議な状態にはまっていた。


 彼がそのことに気付いたのは、何度目かの人生を歩んでいるときだった。

 彼が経験する事の全てが、何かしら「見覚え」のある出来事だったのだ。

 つまり学校で先生に叱られたことや、運動会でビリになったことや、そんないろいろな人生の出来事が、まるで動画をリプレイするかのごとく、彼には回想出来たのだ。

 そんな彼はごく普通の小、中、高校へ通い、ありふれた学生生活を送ったのだが、実は彼は17歳のとき、オートバイにはねられて死ぬのだ。

 だけど何度目かの人生でそのことに気付いた彼は、その直前の状況を覚えていて、それでそのオートバイが事故現場の交差点を通り過ぎるまで待つことにした。

 こうして事故を回避した彼は、初めて17歳以降の人生を送った。

 彼は初めて高校を卒業し、初めて大学受験をし、大学へ行き、普通の人生を歩んだのだけど、50歳の時、彼は癌で死んだ。


 それからその次の人生で、彼は一念発起し、東大の医学部を受験した。実は彼は、自分が罹るであろう癌の治療法を開発したかったのだ。

 もちろん平凡な彼は東大に落ち、それでほかの大学へ行き、そこそこの人生を歩んだのだけど、やはり彼は50歳で癌で死んだ。

 それでもその次の人生で、彼は再び東大の医学部を受験した。

 だけど問題を見て彼は驚いた。

 全く同じ問題が出ていたのだ。まるで動画でもリプレイするかのように…

 もっとも残念ながら再び落ちて、だからまたほかの大学へ行ったのだけど、彼はその年の東大入試問題の過去問を手に入れ、一生をかけてその問題を完璧に解けるよう努力した。

 もちろん彼は、それなりの人生を送ったのだが、やはり50歳で癌で死んだ。


 そしてその次の人生で、彼はまた東大の医学部を受験した。

 もちろん、全く同じ問題が出て、だからそれを完璧に解くことができ、それで初めて念願の東大医学部に合格した。

 そして東大卒業後は医学研究者になり、自分が50歳で罹るであろう癌の研究を始めた。

 彼はそれをライフワークとしたのだけど、残念ながら治療法は確立出来ず、やはり50歳のとき、その癌で死んだ。

 もちろん次の人生でも、彼は同様に医学研究者になり、前の人生でやった研究の「続き」をライフワークにした。

 そんな彼は、本来なら平凡な人間ではあったが、人生を重ねるごとに、少しずつ研究のレベルが向上していった。

 そしていつしか彼は、人々から「天才科学者」と呼ばれるまでになったのだ。


 そうしてそれから何回目かの人生で、彼はとうとう自分が罹るであろう癌の治療法を発見した。 

 それは画期的な治療法で、彼はその治療法のおかげで自分の癌を克服でき、もちろん彼は初めて50歳以後の人生を歩むことも出来た。

 そして実は、彼の発見したその治療法は世界中に普及し、沢山の人々の命を救い、それから彼が60歳の時、彼は見事ノーベル医学生理学賞を受賞した。

 それは彼にとって15回目の人生だった。

 そして、ノーベル賞授賞式の後に行われた懇親会で、彼は他のノーベル賞受賞者たちと話をしていた。

 そんな彼は、ある受賞者に声を掛けられた。


「あなたは何回目の人生ですか? 私は17回目です。そして私が聞いたところ、ここにおられる他の受賞者の皆さんも、大方は10回以上の人生を歩んでおられるそうですよ。やはり何度も自己転生しないと、この世界で無双、即ちノーベル賞受賞なんてことは、出来ないのでしょうなあ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ