(3)
「誰だっけ?」
酒場に入ってきたのは……どこにでも居そうな感じで、そんなに高価くもなく、かと言ってボロボロでもない服を着た……けど、服なんかから、何の仕事をやってるか、さっぱり見当が付かないおっちゃんだった。
「冒険者ランキング元7位の……」
「ちょっと待って……3位から6位のチームの生き残りは……」
「だから、3位から6位のチームの生き残りは……えっと、ちょっと待って下さい……」
そう言って、イルゼは懐から魔法の石版を取り出して操作し……。
「元3位のチームの生き残りは……職業は気功拳士。『鋼の男』によるチーム壊滅の後、野垂れ死んでるのが見付かる。推定死因は……かなり危険な違法薬物のキメ過ぎ。元4位チームの生き残りは……職業は僧侶(自称)。『鋼の男』によるチーム壊滅の後、魔力UPの為に、強力な魔物と契約しようとして失敗。頭からガジガジと食われた模様。なお、現場付近の広い範囲は一般人立入禁止の魔法災害区域指定。元5位のチームの生き残りは……エルフ(自称)の魔法剣士。重度のトラウマで日常生活を送るのも困難だったが……洗脳で新しい人格を植え付け……」
「待って……私にも……その……魔法で洗脳なんてやる気じゃ……?」
「幸か不幸か、姉さんは無理です。『酒の飲み過ぎで脳が変質してるけど、魔力は元のままの魔法使い』に通常の精神操作系魔法をかけると、どんな副作用が有るか判んないんで、恐くて出来ません」
「ああ……良かった……助かった。で、その元5位のチームの偽エルフさんは……」
「あ、それなら、俺のツレが持って来ました」
そう言ったのは、ランキング元7位のチームのおっちゃん。
「持って来た?」
「連れって……誰?」
「俺だ……。何か……面白そうな事を秘密裏にやろうとしているそうだが……俺も仲間に入れてもらえないかな?」
そう言って、店の中に入って来たのは……。
今度は「誰だっけ?」じゃない。
良く知ってる奴だ。
私と偽聖戦士のルーカス君は……そいつを見た途端に悲鳴をあげた……。