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「さ……さけ……もう一杯だけ……一番強いヤツ……」

「あのねえ……姐さん、いい加減にしなよ……。第一……金は有るのか?」

 酒場のマスターは、冷たい声でそう言った。

 しばらく後、マスターとどんなやりとりをしたかさえ良く覚えてない状態で酒場を追い出された私は、フードを被りおぼつかない足取りで歩き始めた。

「死ねッ‼」

「この野郎ッ‼」

「殺す‼ 殺す‼ 殺す‼」

 外では王都の住人達の罵声が轟いていた。

 そんな状態でも、あの慣習は続けられている。

 ただし、その山車(だし)はを引く馬は王都で入手出来る中でも最高クラスの名馬から二束三文の駄馬に変り、山車(だし)そのものには強力な防御魔法がかけられるようになった。

 月1回、都の冒険者ギルド認定の「冒険者ランキング1位」の冒険者を乗せた山車(だし)が王都中を回る。

 簡素で無骨な鎧で全身を隠した通称「鋼の男」が、その山車(だし)に乗っていた。

 あの時……私の「魔力の矢」が全く効かなかった時のように、罵声に動じる事もなく……。

 1年前まで、あの山車(だし)に乗っていたのは、私達だった。

 1年前まで、「冒険者ランキング1位」の冒険者は、王都の民の憧れだった。

 しかし……今は……。

 「冒険者ランキング1位」はどうやって決められるか?……答は「冒険者ギルドへの上納金の額」だ。

 まぁ、あいつ以前にも「他の冒険者を殺して財宝を奪う」ような不心得者は居た。

 しかし……それは、ギルドに所属してないチンピラどもだ。

 ギルドのランキング上位の冒険者を倒すなど一苦労の筈だった……。

 例えば、ランキング1位のパーティーが、ランキング2位のパーティーを倒せたとしても、ランキング1位のパーティーでも何人かが死ぬか大怪我をする羽目になる。

 ランキング上位のパーティーが、別のランキング上位のパーティーを殺して財宝を奪うなど、コスト的に見合わない上に、名声も失なう。

 あいつが現われるまでは……。

 突如として現われた「2位以下に圧倒的な実力差を付けた不動の1位」。そいつが2位以下を次々と虐殺していったのだ。

 そして、あいつは、一般人にどれだけ憎まれようと……屁とも思っていない。

 ギルドは……そんな事態を想定していなかった。

 王都の人々は自分達の「推し」の冒険者パーティーを殺した「ランキング1位」に罵声を浴びせ続ける。

 そんな中、私は顔を隠し、人目につかぬように用心しながら、おどおどと歩き続けた。

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