(1)
「逃げろ〜ッ‼」
魔法防壁を展開していたらしい幹部のお爺さんが、そう叫んだ次の瞬間……。
魔法防壁は完全に砕け散り……。
黒装束達が次々と落下&スーパーヒーロー着地。
「ぐえっ‼」
ただし1名は除く。
たまたま、幹部のお爺さんの内の1人の頭上に居た黒装束が、そのお爺さんの脳天に魔力を込めたドロップキック。
そのお爺さんの頭は、あっさり砕け散る。
「おのれッ‼ 若造どもがッ‼ いい気になりおってッ‼」
気功拳士のお爺さんが、黒装束の1人を殴り付け……。
命中。
流石は……元は一流の冒険者。不意打ちでも食らわない限りは……腕前の差は圧倒的……。
ちゅど〜ん♪
爆音と共に、気功拳士のお爺さんは……不意打ちを食らって、全身丸焦げになり倒れた。
な……なんつ〜。
さっきの「葬除屋」さん達が「魔法の人間爆弾」に変えられてた事で気付くべきだった……。
この人達は……全員が……自分を「魔法の人間爆弾」に変えてる。
それも……どうやら、自分を殺した相手の方向に自動的に爆風を向けるか、死ぬ間際に爆風の向きを変える事が出来る……「魔法の指向性人間爆弾」に……。
「な……な……な……な……な……何で……こんな……?」
「名乗りが遅れたな……」
黒装束のリーダー格らしいの(黒装束で見分けが付きにくいけど)が、そう言った。
「我らが規律、もはや鋼鉄ならず。我らが心、もはや空ならず。我ら、ただ、怨念の悪鬼ッ‼」
え……えっと……何で、何で、何で、イヤアアアア、何で、暗殺者ギルドの生き残りとやらが……冒険者ギルドの幹部を襲撃……。
それに、暗殺者ギルド所属の暗殺者の決め台詞は「我らが規律、元より鋼鉄なり。我らが心、既に空なり。お命頂戴‼」だった筈……。
「あ……あの……」
「何だッ⁉」
私は、生き残りの幹部の1人の服の袖を引っぱって訊く。
「何で、暗殺者ギルドが壊滅してて……その生き残りに、冒険者ギルドの幹部が狙われてんですかッ⁉」
「だ・か・ら、お前が言った『アイデア』を誰も考え付かなかったと思ってるのか?」
「へっ?」
「我々は、『鋼の男』の暗殺を暗殺者ギルドに依頼した。その結果、暗殺者ギルドのエース級は、ほぼ全員皆殺し。暗殺者ギルドの本部も突き止められた挙句……」
「えっ? それじゃ……」
おい、待て……。
「じゃあ、怨みは、『鋼の男』に向ければ、いいじゃないッ‼」
「暗殺者としての職業倫理なら、その通りだ。しかし……冒険者ギルドの依頼を受けたせいで、暗殺者ギルドは壊滅した。我らは……最早、暗殺者でさえない、単なるならず者だッ‼」
開き直るなッ‼
「現実主義に徹して、生き残りでは、どうやっても倒せない『鋼の男』ではなく、お前ら冒険者ギルドの幹部を倒して、我らが怨みを晴らす事にしたッ‼ 警備厳重な冒険者ギルド本部から、揃ってのこのこ出て来たのが運の尽きと思えッ‼」
え……。
待って……。
冒険者ギルドの本部の建物が使えなくなったのは……。
「お前のせいかッ‼」
幹部のお爺さん達が一斉に私に向けて罵声を浴びせた。