Round Up/一網打尽
轟音がダンジョンに響く。
剣なら、槍なら、斧なら……その他、普通の武器なら防ぐ手段などいくらでも有った。
そいつが、さっきまで居た場所の床は凹みヒビが入り……。
とんでもない巨体が……助走も予備動作も無しに飛龍さえ超える速度で突撃してきた。
そいつは、私達の一行のリーダーである戦士と激突……リーダーの近くに居た僧侶と忍者は、そいつとリーダーが激突した衝撃波で吹き飛んだ。
更なる轟音。
近くに有ったブッ太い石柱が、まるで、床に叩き付けられた陶器のコップのように粉々になる。
どうやら……2人がぶつかったせいで砕け散ったらしい。
続いて……3回目の轟音と共に……。
ビシ……ビシ……ビシ……。
迷宮の壁にヒビが入る。
そいつとリーダーが壁に激突したせいだ……。
リーダーが装備していた鎧も剣も盾も無事なようだ。
流石は最高クラスのマジック・アイテムだ……。こんな状況なのに、私の脳裏には呑気な感想が浮かんだ。
しかし……その「中身」であるリーダーは……。
「ぶ……ぶひゅ……っ」
端的に言って、死ぬまで悪夢にうなされそうな酷い状態だった。
ただし、悪夢にうなされるのは、死ぬのが確実なリーダーではなく……私の方だ。この状況から生き残れたとしてだが……。
そうだ……彼の腕なら……普通の武器同士の戦いなら……いくらでも対処法は有った。
けれど……。
そいつの全身は白銀の鎧に包まれていた。
おそろしく簡素な作りの鎧だった。
顔は見えない。
どうやって外を見てるのか判らないが……覗き穴さえ見当らないのっぺりとした面頬が素顔を覆ってる。
あれだけの速度で他人に石柱に壁に激突したのに、中の人間は何とも無いようだ。
鎧の方も……ほんのわずかな凹みも傷も無い。
訳が判らないほどの防御力を持つ鎧を着装した状態で、これまた訳が判らないほどの速度での肉弾攻撃。
人間にしか見えないモノが投石機から投げられる弾と化したようなモノだ。
相手がモンスター……それも人間とは大きさも形も違う連中……ならともかく、人間がそんな真似をやるなんて発想は無かった。
「うわああああッ‼」
私は自分でも意味不明な絶叫をあげながら……「魔力の矢」を何本も放つ。
だが……効いていない。
ここまで無茶苦茶な「魔法の鎧」など聞いた事も無い。
有るとすれば……。
「の……呪いの……鎧?」
その鎧から感じられる魔力は……あまりに強大で禍々しいもの……。
「ごわっ‼」
「ぐえっ‼」
そいつは……虫でも踏み潰すかのように無造作に、床に倒れていた私の仲間の僧侶と忍者を踏み殺した。
「これで……」
年齢が良く判らない声……。
しかし、そいつが言ったセリフは……あまりにも俗っぽいモノだった。
「俺が『冒険者ランキング』1位って事になるのかな?」